音が小さい音源を、他の音源並みの音量レベルに揃えるときに使える方法
(写真はイメージです)
今回は音が小さい作品音源(アルバム、EPなど)を、他の音源並みの音量レベルに揃えるときに使える方法をお伝えします。
こんな方に特におススメの内容です。
- 古いCDは音が小さいので困っている
- 音量が違う作品音源(アルバム、EPなど)を他の作品音源並みに揃えたい
古いCDなどは新しい作品音源に比べて音量が小さいことが多いです。
そのCDを聴くだけなら、聴いている間だけプレーヤーのボリュームを上げるだけでよいのですが、新しい音源と混ぜこぜに聴く場合に、そのような音量差に合わせてボリュームを都度切り替えるのは面倒です。
ですので、こうした音の小さいトラック(曲)の音量を上げたくなるわけですが、
音量を上げるにあたっては、元々調整されているであろう音量バランスもあまり崩したくないところです。
今回お伝えする方法は、そのような「音量アップと音量バランスの両立」を図るためのものです。
最初にその大まかな手順を示しておくと
- 現状の音量を把握する
- 目標全曲平均音量を決める
- 音量の上げ方を決める
- 音量を上げる
といったところになります。
ややステップ数が多いように感じるかもしれませんが、考え方はシンプルです。
なお、音量の上げ方には以下2種類あり、(方法1)で十分音量を上げられそうであれば(方法1)を、そうでなければ(方法2)を選択するとよいでしょう。
- (方法1)各曲の音量をそのまま単純に上げる
- (方法2)各曲に対してマキシマイザーをかけて音量を上げる
(方法2)で必要となるマキシマイザー処理可能なツールの例としては、iZotopeのOzoneが挙げられます(Ozoneは、バージョン10以降、スタンドアロンアプリがないため、DAWソフトや波形編集ソフトにおけるプラグインとして使用する必要があります)。
それでは以下、詳しくみていきましょう!
1.現状の音量を把握する
(写真はイメージです)
音量を上げる対象とする作品音源(アルバム、EPなど)の現状の音量として、以下2つの音量を把握します(後の作業で必要となります)。
- 現状全曲平均音量
- 現状全曲最大音量(ピーク)
以下、それぞれ説明します。
1-1.現状全曲平均音量
これは、音量を上げる対象とする作品音源(アルバム、EPなど)の、現状における各曲音量(RMS値)の全曲平均です。
具体的には、音量を上げる対象とする作品音源(アルバム、EPなど)について、一曲を通しての音量のRMS値を各曲分求め(以下式に基づいて)、それらを平均したものを「現状全曲平均音量」(単位はdB(デシベル))とします。
20×(log(RMS_L) + log(RMS_R))/2
- log:対数(底10)
- RMS_L:左(L)チャンネル音声データのRMS値(全区間について)
- RMS_R:左(R)チャンネル音声データのRMS値(全区間について)
RMS値は音声データ瞬時値の二乗値を全区間で平均した値の平方根をとったものです。
なお、一般的なステレオ音源の場合、左右で音声データパターンが異なるため、音量も左右で異なることが一般的ですが、ここでは左右平均値を算出する形としています。
一曲中の音量は時々刻々変化しますが、こうして算出した値によって、その曲の平均的な音量が把握できます。
1-2.現状全曲最大音量(ピーク)
一曲中の音量は時々刻々変化しますが、変化する音量のうち、ここでは一曲を通しての最大音量(ピーク)の、全曲の中での最大値を求めます。
具体的には、以下式に基づいて(log(MAX_L)とlog(MAX_R)のうち、最大となる方の値をとる)求めた各曲分の最大音量(ピーク)の、全曲の中で最大となる値を「現状最大音量(ピーク)」(単位はdB(デシベル))とします。
MAX(log(MAX_L),log(MAX_R))
- log:対数(底10)
- MAX_L:左(L)チャンネル音声データの瞬時絶対値の最大値(全区間における)
- MAX_R:左(R)チャンネル音声データの瞬時絶対値の最大値(全区間における)
一般的なステレオ音源の場合、左右で音声データパターンが異なるため、音量も左右で異なることが一般的ですが、ここでは左右のうちで大きな方の値をとることとしています。
2.目標全曲平均音量を決める
対象とする作品音源(アルバム、EPなど)の「全曲平均音量をどこまで上げるか」という目標を「目標全曲平均音量」(dB)として決めます。
この決め方としては以下2つの方法があります。
- 別音源の音量を参考に決める
- 別音源の音量によらずに決める
2-1.別音源の音量を参考に決める
元々、音量を上げたいというのは、他の曲に比べて音量が小さい曲の音量を他の曲並みにしたいということですから、その他の曲の音量を参考に決めるのがやりやすいでしょう。
2-2.別音源の音量によらずに決める
ある程度、自分の中で音量レベルのイメージが固まっている場合には、自分で決め打ちで目標設定するのも一つの手です。
3.音量の上げ方を決める
対象とする作品音源(アルバム、EPなど)に収録されている各曲の音量(RMS値のdB値)を、各曲同じ量(dB)だけ上げます。
音量の引き上げ量(dB)を一律にすることで、その作品音源内トラック(曲)同士の音量(RMS値のdB値)差関係をそのまま保つことができます。
音量の上げ方には2種類あり、以下の手順でどちらの方法をとるかを決めます。
- 想定音量引き上げ量(=目標全曲平均音量 - 現状全曲平均音量)を算出
- 想定音量引き上げ量≦目標全曲最大音量(ピーク) - 現状全曲最大音量(ピーク)であれば(方法1)、そうでなければ(方法2)を選択
- 目標全曲平均音量(dB):対象とする音源の全曲平均音量をどこまで上げるかという目標値(本記事2参照)
- 現状全曲平均音量(dB):対象とする音源の現状の全曲平均音量(本記事1-1参照)
- 目標全曲最大音量(ピーク)(dB):目標とする全曲最大音量(一般的には0~-1.5dBで設定するのが望ましい)
- 現状全曲最大音量(ピーク)(dB):対象とする音源の現状の全曲最大音量(本記事1-2参照)
(方法1)と(方法2)はそれぞれ以下のような方法です。
- (方法1)各曲の音量をそのまま単純に上げる
- (方法2)各曲に対してマキシマイザーをかけて音量を上げる
(方法1)が最も簡単であり、音質変化も基本的にないため(演算誤差による影響は除く)、(方法1)で目標達成できる(音量を上げても目標全曲最大音量(ピーク)を超えない)のであれば、こちらを選ぶのがよいでしょう。
以下、各方法について説明していきます。
3-1.(方法1)各曲の音量をそのまま単純に上げる
上で述べた「想定音量引き上げ量」分だけ各曲の音量を上げる、という方法であり、以下のようなメリットがあります。
- 波形崩れなし(最大音量(ピーク)を超えない場合)
- 最も簡単
波形をそのまま単純に大きくするだけなので、最大音量(ピーク)を超えなければ、波形が崩れることはありません(演算誤差による影響は除く)。
逆に言うと、この方法を使う前には現状の最大音量(ピーク)がどれぐらいかを考慮する必要があります(そのため、3の冒頭で(方法1)か(方法2)かを決める方法をお伝えしました)。
そのため、以下のようなデメリットがあります。
- あまり音量を上げられない可能性がある
波形をそのまま単純に大きくするだけなので、どこまで音量を上げられるかは、その曲の最大音量(ピーク)(RMS値ではなく瞬時絶対値)次第であり、最大音量(ピーク)が既に限界近い場合には、それほど音量を上げられません。
特に、平均的な音量(RMS値の音量)が小さい割に最大音量(ピーク)が大きい音源に対して、こちらの方法は不利になります。
3-2.(方法2)各曲に対してマキシマイザーをかけて音量を上げる
(方法1)に比べると少々複雑ですが、以下のようなメリットがあります。
- (方法1)に比べると音量を上げやすい
波形形状を変えることで、最大音量(ピーク)を抑制しつつ、平均的な音量(RMS値の音量)を上げられるので、
平均的な音量(RMS値の音量)が小さい割に最大音量(ピーク)が大きい音源でも、それなりに平均的な音量(RMS値の音量)を上げられます。
ですが、メリットばかりではなく、以下のようなデメリットがあります。
- 波形変化による音質変化がある
- 設定パラメータの調整が難しい
波形形状を変えるため、音量のみならず、音質も変わります。
どのような波形形状に変えるのかは、設定パラメータで調整しますが、その調整内容によっては、音質劣化を感じるような結果になることもあります。
ですので、設定パラメータの調整が重要になってきますが、この調整が難しいことが多いです。
(方法1)の設定パラメータは、音量の引き上げ量のみなので、調整も比較的簡単ですが、
(方法2)の設定パラメータには、マキシマイザー処理を行う音量レベルの閾値、その他複数のものがあるため、(方法1)に比べて設定パラメータの調整が難しくなる傾向にあります。
なお、このようなマキシマイザー処理可能なツールの例としては、iZotopeのOzoneが挙げられます(Ozoneは、バージョン10以降、スタンドアロンアプリがないため、DAWソフトや波形編集ソフトにおけるプラグインとして使用する必要があります)。
4.音量を上げる
3で決めた方法で実際に音量を引き上げます。
- (方法1)の場合は、各曲に対して想定音量引き上げ量(dB)分だけ音量を上げる
- (方法2)の場合は、以下の通り算出した目標各曲平均音量の通りの平均音量(RMS値)が得られるよう、マキシマイザーで処理を行う(最大音量(ピーク)も設定可能であれば、目標全曲最大音量(ピーク)を超えないように設定しておく)
目標各曲平均音量=現状各曲平均音量 + (目標全曲平均音量 - 現状全曲平均音量)
- 目標全曲平均音量(dB):対象とする音源の全曲平均音量をどこまで上げるかという目標値(本記事2参照)
- 現状全曲平均音量(dB):対象とする音源の現状の全曲平均音量(本記事1-1参照)
- 現状各曲平均音量(dB):現状全曲平均音量を算出する過程(本記事1-1参照)で算出した各曲の現状の平均的な音量(RMS値)
(方法2)の場合は、マキシマイザーによって波形を変えるので、その影響で音割れなど、音質に問題が出ていないかを確認した方がよいでしょう。
特に、現状と目標の音量差が大きいほど、こうした問題が起きやすいので、どうしても調整できない場合には目標音量レベルを下げた方がよいこともあります。
5.最後に
以上、音が小さい作品音源(アルバム、EPなど)を、他の音源並みの音量レベルに揃えるときに使える方法をお伝えしてきました。
最後にもう一度大まかな手順を示しておきます。
- 現状の音量を把握する
- 目標全曲平均音量を決める
- 音量の上げ方を決める
- 音量を上げる
音量の上げ方には以下2種類あり、(方法1)で十分音量を上げられそうであれば(方法1)を、そうでなければ(方法2)を選択するとよいでしょう。
- (方法1)各曲の音量をそのまま単純に上げる
- (方法2)各曲に対してマキシマイザーをかけて音量を上げる
(方法2)で必要となるマキシマイザー処理可能なツールの例としては、iZotopeのOzoneが挙げられます(Ozoneは、バージョン10以降、スタンドアロンアプリがないため、DAWソフトや波形編集ソフトにおけるプラグインとして使用する必要があります)。
今回の記事が
- 古いCDは音が小さいので困っている
- 音量が違う作品音源(アルバム、EPなど)を他の作品音源並みに揃えたい
といった方のご参考になれば幸いです。