その自作音源、本当にアップして大丈夫?~著作権、その他規約の問題を考える~

現在、自作音源配信(アップロード)可能なサービスが多く存在しており、DTM、MTR、その他制作手段は何であれ、自作した音源をネットで公開して多くの人に聴いてもらう、ということが、手軽にできるようになりました。

ですが、音源配信(アップロード)するにあたっては、著作権法や各社サービスの規約を遵守する必要があり、「自作音源なら何でも配信(アップロード)してよい」というわけではありません。

1.自作音源配信(アップロード)可能なサービス4選

今回は、初期費用不要なサービスのうち、私が利用したことのあるものを中心に、以下4サービスを対象として話を進めます。

  • Audiostock
  • Frekul
  • SoundCloud
  • Youtube

<Audiostock>

ロイヤリティーフリーの音源素材(BGM、効果音、歌モノ、ボイス)を販売するサイトです。

ここで販売されているロイヤリティーフリーの音源素材を購入した人は、Audiostock規約の範囲内で、その音源を自身の商用・非商用のゲーム、映像等のコンテンツに使用することができます。

身分証明書のコピー提出等の手続きを行った上で、クリエイター登録(無料)することにより、個人でもこれらの音源素材を販売することができます。

なお、販売にこぎつけるためには、Audiostockの審査を通過する必要があります。

<Frekul>

バーチャルプロダクションを謳うWebサービスです。

アーティスト登録(無料)を行うことで音源配信が可能となります。

Frekulの音源配信には、次の2パターンがあります(以下の「デフォルト配信」、「アドバンスト配信」という用語は、私が説明の便宜上、独自に定義したもの)。

  • デフォルト配信:FMあおぞら(インターネットラジオ)、Lumit(ラジオ型音楽アプリ)、シンプルBGM(BGMアプリ)への配信
  • アドバンスト配信:Apple Music、Amazon等の各社音楽配信(ストリーミング/ダウンロード)サービスへの配信

アドバンスト配信には、別途、身分証明書のコピー提出等の手続きが必要となります。

<SoundCloud>

公式の表現ではありませんが、「音楽に特化したYoutube的なもの」といえばわかりやすいでしょう。

SoundCloudアカウントを作成(無料)することで、音源アップロードが可能となります。

アップロードされた音源は、SoundCloudのアカウント有無によらず、無料で聴くことができます。

<Youtube>

Youtubeアカウントを作成(無料)することで、動画として音源をアップロードすることが可能となります。

アップロードされた音源は、Youtubeのアカウント有無によらず、無料で聴くことができます。

2.配信OK/NG判断のポイント

以降、自作音源のうち、どのようなものがどのサービスで配信可能なのかを説明していきますが、そのためにはまず、以下の観点で音源を区分けして考える必要があります。

  • オリジナル曲カバー曲
  • 歌声合成ツール(ボカロ、UTAU等)を使用しているかどうか
  • (カバー曲の場合)カバー元の著作権が現存していない(パブリックドメイン)かどうか
  • (カバー元の著作権が現存している場合)カバー元はJASRAC管理楽曲かどうか

なお、カバー曲の配信(アップロード)については、権利者から個別に事前許可が得られているケースを除いて話を進めます。

それでは、次の章で各社サービスの対応状況をみていきましょう。

3.各社サービスの対応状況

以下に今回取り上げた4つのサービスごとに、各音源タイプの配信(アップロード)OK/NGをまとめました。

各社サービスの自作音源配信(アップロード)対応状況
歌声合成ツール 楽曲タイプ Audiostock Frekul(デフォルト配信) Frekul(アドバンスト配信) SoundCloud Youtube
あり オリジナル曲 ×
カバー曲(パブリックドメイン) × ×
カバー曲(JASRAC管理楽曲) × × × ×
カバー曲(上記以外) × × × × ×
なし オリジナル曲
カバー曲(パブリックドメイン) ×
カバー曲(JASRAC管理楽曲) × × × ×
カバー曲(上記以外) × × × × ×

以下、各社対応状況の特徴です。

<Audiostock>

オリジナル曲、カバー曲(パブリックドメイン)のアップロードが可能ですが、ボカロやUTAUなどの歌声合成モノはアップロードできません

<Frekul>

デフォルト配信、アドバンスト配信とも、歌声合成モノのオリジナル曲配信が可能です。

デフォルト配信のみであれば、カバー曲(パブリックドメイン)の配信も可能です。

<SoundCloud>

歌声合成モノも含めた、オリジナル曲、カバー曲(パブリックドメイン)のアップロードが可能です。

カバー曲(JASRAC管理楽曲)のアップロードはできません

<Youtube>

歌声合成モノも含めた、オリジナル曲、カバー曲(パブリックドメイン/JASRAC管理楽曲)の配信が可能です。

なお、カバー曲(JASRAC管理楽曲)の場合は注意が必要です。

アップロード主が個人以外(企業、団体等)の場合、外国曲のアップロードはNGです。

また、カバー曲のアップロード動画からの広告収入についても注意が必要です。

カバー元がYoutubeのデータベースシステムContent IDに登録されている楽曲であれば、収益の分配という形で、いわば正式に広告収入を受け取ることも可能ですが、そうでない場合、広告収入を得ることが正式には認められないということになるので、収益化は避けるべきでしょう。

4.最後に

私は、今のところオリジナル曲音源のみのリリースですが、「カバー曲をアップするのはどうだろうか?」と思うところがあったので、今回少し調べてみました。

やはり著作権が現存する楽曲のカバーを配信(アップロード)するのは、ややこしい点が多くてハードルが高いですね。

同じカバー曲でも、カバー元がパブリックドメインであれば、もう少しハードルが下がります。

現在、パブリックドメイン楽曲といえば、クラシック音楽がほとんどという印象ですが、そのうち1960s~70sのロックもパブリックドメインとなれば、多くの人がこれらのカバーを配信(アップロード)するようになって、面白い状況になりそうです。