簡単!DTM用DAWソフトACID Pro 8の基本的な使い方~定位(パン)の設定操作方法~
今回は、DTM用DAWソフトACID Pro 8における定位(パン)の設定方法について解説します。
定位(パン)とは何でしょうか?
最近のJ-POPの楽曲音源などをヘッドフォンやイヤフォンで聴けばわかりますが、大抵、楽器によって音が左から出ていたり、右から出ていたりしませんか?
このような音源を「ステレオ音源」といいます。
このようなステレオ音源を作成するためには、「どの楽器をどの位置(左右)から鳴らすか」という設定をしなければなりません。
これが定位(パン)設定です。
ACID Pro 8で定位(パン)設定を行うために用意された定位(パン)モードには、主として使用することが多いと思われる(独断)ものだけでも、「追加(チャンネルの加算)」、「0/-3/-6dB(バランス)」、「CPower(コンスタントパワー)」の3種類あります。
3種類?
これはややこしそうですね。
が、次の2点を覚えておけば、ひとまずOKです。
- 左右どちらか一方の音量のみを調整する場合は「0dB(バランス)」を使用
- 全体の音量を変えずに定位のみを変える場合は「CPower(コンスタントパワー)」を使用
この使い分けを覚えておけば、調整操作そのものはスライダーを動かすだけなので、あとは存分に判断&調整作業に専念できます!
それでは解説スタートです。
1.ACID Pro 8における定位(パン)モードの種類と設定方法
繰り返しになりますが、ACID Pro 8における定位(パン)モードには、主要なものだけでも以下の3種類あります。
- 「追加(チャンネルの加算)」
- 「0/-3/-6dB(バランス)」
- 「CPower(コンスタントパワー)」
その他に「フィルム」というものもありますが、これは5.1チャンネルのサラウンド音源を取り扱う際に使用するもので、通常のステレオ音源作成時にあえて使う必要はないでしょう。
ここで「通常のステレオ音源」というのは、現在主流である、左右2チャンネルのステレオ音源のことを指します。
さて、定位(パン)設定を行うには、どのように操作すればよいのでしょうか?
大まかには次のような流れです。
- 画面右下の方の「ミキシング コンソール」に表示される各オーディオトラック、各ソフトシンセバスの中にある、左右方向に移動可能なスライダ部分で右クリック
- 定位(パン)設定モードを選ぶメニューが表示されるので、所望のものを左クリックして選択
- スライダを動かして調整
スライダを左に振り切れば(L100%)左からのみ音が出るようになり、右に振り切れば(R100%)右からのみ音が出るようになります。
この点は、定位(パン)設定モードの違いによらず変わりません。
しかし、定位(パン)設定モードによって、スライダ位置に応じた左右の音量バランス変化のパターンや、左(右)に振り切ったときの音量が異なります。
ちなみに、以降、スライダ位置を左右どちらかに移動させて、定位(パン)を調整することを、「パンを振る」ということにします。
それでは、これらの特徴と使い分け方について詳しくみていきましょう。
2.「追加(チャンネルの加算)」
デフォルトで設定されているのがこちらのモードです。
オーディオトラックでは「追加」、ソフトシンセバスでは「チャンネルの加算 (0 dB センター)」と表示されます。
このモードの特徴は、
- 左(右)にパンを振ると、右(左)チャンネルの信号が左(右)のチャンネルに加わる形で、左右の音量バランスが変化する
- 左(右)100%にパンを振ったときの音量は、パンを振る前の最大音量(左右いずれかの大きい方)レベル+6dBに等しくなる
という点です。
+6dBというのは、単純に言えば音量2倍(人間の聴感特性を無視した場合)に相当します。
このモードは、パンを振る度に音量が変化、しかも片側の音量が大きくなる傾向にあることから、音割れが生じやすいです。
従って、定位(パン)の調整には使いづらく、あまり出番はないでしょう。
3.「0/-3/-6dB(バランス)」
「0/-3/-6dB(バランス)」と一まとめに表しましたが、実際には3つのモードをそれぞれ選ぶ形となります。
これらのモードも、オーディオトラックとソフトシンセバスとで表示名が異なります。
オーディオトラックでは、
- 0dB
- -3dB
- -6dB
と表示され、ソフトシンセバスでは、
- バランス (0 dB センター)
- バランス (-3 dB センター)
- バランス (-6 dB センター)
と表示されます。
これらのモードの特徴は、
- センターに設定したときの音量が、0/-3/-6dBの各設定に応じて、それぞれ0, 3, 6dB下がる(0dBは変化なし)
- 左(右)100%にパンを振ったときの音量は、パンを振る前の左(右)の音量に等しくなる
という点です。
「追加(チャンネルの加算)」同様、定位(パン)の位置によって全体の音量変化が生じうるものの、「追加(チャンネルの加算)」の場合にあった「一方の音量が大きくなる」という傾向がないため、比較的使いやすいかと思います。
特に、「0dB」は、パンを左(右)に振っても、左(右)の音量が変わらず、右(左)の音量のみが減少するという特性から、「片側の音量のみを下げたい」といったときに重宝することでしょう。
4.「CPower(コンスタントパワー)」
オーディオトラックでは「CPower」、ソフトシンセバスでは「コンスタントパワー」と表示されます。
このモードの特徴は、
- センターに設定したときの音量が約3dB下がる
- 定位(パン)を変えたときの音量変化が抑制される
- 左(右)100%にパンを振ったときの音量は、パンを振る前の左(右)の音量に等しくなる
という点です。
なお、最後に挙げた特徴は、3で説明した「0/-3/-6dB(バランス)」と同じなので、左(右)100%にパンを振ったときには、これらのモードと同じ結果となります。
マニュアルでは、「モノラル音源の定位(パン)を調整するときに役立つ」というような内容の説明書きがあります(原文(「ACID Pro 8 Online Help」より引用)This mode is most useful for panning monaural source material.
)。
ですので、モノラルマイク1本で録音したギターやボーカルに対しては、この「CPower(コンスタントパワー)」モードが特に重宝することでしょう。
5.最後に
以上、ACID Pro 8における定位(パン)設定方法、使い分け方について説明してきました。
もう一度ポイントを以下にまとめます。
- 左右どちらか一方の音量のみを調整したい場合は「0dB(バランス)」を使用
- 全体の音量を変えずに定位のみを変える場合は「CPower(コンスタントパワー)」を使用
実は私、これまで定位(パン)設定に3つのモードがあることを知らず、デフォルトの「追加(チャンネルの加算)」のみを使用していました。
上でも述べた通り、この「追加(チャンネルの加算)」モードは、定位(パン)の位置によって全体の音量が大きく変わります。
そのため、定位(パン)変更時には必ずと言っていいほど音量調整を余儀なくされることとなり、非常に作業効率が悪かったと思います。
私の場合、音量一定で定位(パン)を調整すればよいことの方が多いので、今後は「CPower(コンスタントパワー)」メインで作業していくことにしたいと思います。