複数台PCにインストールできるDAWソフトはどれ?
PCなどで音楽を作る、DTM(デスクトップミュージック)をやるにあたっては、DAW(デジタルオーディオワークステーション)ソフトというものが必要となります。
これは、ギターやボーカルなどのオーディオ録音、MIDIデータの打ち込み、ミキシング、その他編集作業を行うためのソフトウェアで、現在、各社から様々なものがリリースされています。
DAWソフトに限った話ではありませんが、この手のソフトウェア購入にあたっては、機能や値段もさることながら、「複数台のPCにインストールできるのだろうか」という点も気になりませんか?
ソフト1本で複数台インストールできれば、お得ですよね?
というわけで今回は、以下に示すDAWソフトシリーズのうち、「複数台インストール可能なものはどれなのか?」について調べてみました。
- Cubase
- ACID
- Studio One
- Logic Pro X
調査の結果、複数台にインストール可能なDAWソフトは、以下の通りであることがわかりました。
- Cubase(Pro/Artist/バージョン12以降のElements)
- ACID (Pro/Music Studio)
- Studio One
- Logic Pro X
バージョンやエディションによって事情が異なりますので、要注意です。
それでは、以下、インストールや同時使用の上限台数調査結果も含め(一部特定できていませんが)、詳しくみていきましょう。
1.同じDAWソフトを複数台のPCに入れるメリット
そもそも、なぜ複数のPCに、同じDAWソフトをインストールする必要があるのでしょうか?
これには、以下2つのメリットがあると考えています。
- バックアップ環境の確保
- 自宅用PC/外出先用PCの使い分け
バックアップ環境の確保
DTMは、PC上で全作業を完結させることも可能ですが、PCが使えなくなると、何も作業ができなくなって大打撃です。
そんなとき、バックアップ用のPCにDAWソフトが入っていれば、PCトラブルでDTM作業まで滞る、といった事態を避けることができます。
自宅用PC/外出先用PC使い分け
複数PCにDAWソフトのインストールが可能であれば、自宅ではスペック重視でデスクトップPC、外部スタジオなどの出先では、携帯性重視でノートPCを使用する、といった運用も可能になります。
2.各DAWソフトの複数台インストール対応状況
今回は、現在入手可能なDAWソフトのうち、Cubase、ACID、Studio One、Logic Pro Xについて調べてみました。
以下の表に、その結果を示します(複数台インストールに対応しているものは○、そうでないものは×)。
DAWソフト | エディション(用途) | OK/NG |
---|---|---|
Cubase | Pro/Artist/バージョン12以降のElements | ○ |
Elements(バージョン12よりも古いもの)/AI/LE(※) | × | |
ACID | Pro/Music Studio | ○ |
Studio One | Professional/Artist/Prime | ○ |
Logic Pro X | - | ○ |
(※)Cubaseのバージョン12におけるAI,LEについては状況不明なため、調査対象から除外)
2-1.Cubase
歴史の長いWindows/Mac系DAWソフト。
機能の異なる以下のエディションが存在し、Proが最上位の位置づけです。
なお、AIやLEはオーディオインターフェースなどの他製品バンドル(付属)専用のエディションで、単独購入ができません。
- Pro
- Artist
- Elements
- AI
- LE
さて、ソフトのライセンス管理形態は、バージョン12以降か、それよりも古いバージョンなのかによって異なりますので、それぞれ分けて確認していく必要があります(AI,LEのバージョン12については状況不明なため、調査対象から除外)。
まずバージョン12以降の場合。
バージョン12以降における、Pro,Artist,Elementsでは、YAMAHA公式ページに次の文言があるため、「インストールは最大3台まで」ということが読み取れます(アクティベーションが可能ならインストールも可能と判断)。
3台までのコンピューターにアクティベーションすることが可能です。
使用しないコンピューターについては、ライセンスを「無効化」する必要があります。
ただ、複数台同時使用は不可能だと考えられます(Steinberg公式ページに次の文言があるため)。
シングルユーザーライセンスはお一人のお客様に対するものであり、3台のコンピューターでのソフトウェア製品の同時使用は不可能です。
続いてバージョン12よりも古いバージョンの場合。
バージョン12よりも古いバージョンにおける、上位のProやArtistでは、「ソフト使用時には、USB-eLicenser(ドングル)をPCに挿入しなければならない」という管理システムによって、使用台数を制限しています。
このUSB-eLicenserについては、Steinberg公式ページに次の文言があるため、ProやArtistについては「インストールは最大3台まで、同時使用は1台まで」ということが読み取れます。
本ソフトウェアが USB-eLicenser のみにより保護されている場合、ユーザーはユーザーが所有する1台から、最大3台までのコンピューターに本ソフトウェアのライセンスをインストールすることができます。USB-eLicenser を使用して本ソフトウェアを同時に使用できるのはこれらのコンピューターのうち1台のみです。
バージョン12よりも古いバージョンにおけるそれ以外のエディションでは、Soft-eLicenserでのアクティベーションによって、使用台数を制限しています。
Soft-eLicenserからUSB-eLicenserへの変更は可能ですが、YAMAHA公式ページに次の文言があります。
・Soft-eLicenserが採用されている製品のインストールにつきましては、ライセンス規約上一台のみとなっております。複数台のコンピューターにインストールし、USB-eLicenserを差し替えてそれぞれのコンピューターでご使用いただくことはご遠慮下さい
そのため、Soft-eLicenserでの管理がデフォルトとなっている、バージョン12よりも古いバージョンのElements,AI,LEでは、複数台数分のインストールが行えません。
2-2.ACID
Windows系の元祖ループシーケンサー型DAWソフト。
上位版のProと下位版のMusic Studioとがあり、機能や価格に差があります。
2018年、上位版のProが9年ぶりのバージョンアップ(7→8)版をリリースしたことも話題となりました。
ProもMusic Studioも、2台まで同時利用可能(ソースネクスト版)です。
どんなソフトか知りたい方は、以下の使い方系の記事もご参考にしてみて下さい。
2-3.Studio One
「Cubaseに近い操作感」という声もあるWin/Mac系DAWソフト。
以下記事(「藤本健の “DTMステーション”」内)によれば、最近、じわじわとシェアを伸ばしてきているようです。
公式サイトなどを中心に調査したところ、こちらはインストール5台まで(正確にはアクティベーション5回までで、解除も可能という条件)、同時使用1台までとのことです。
同時使用1台までですが、これだけの台数インストールできれば、少なくともバックアップや自宅用PC/外出先用PC使い分け目的で困ることはないでしょう。
2-4.Logic Pro X
Mac系のDAWソフト。
公式ページの「App」項目に記載された、以下文言に制約されるものと思われます。
-「App」という言葉には、アプリケーション、iMessage、Apple Watch App、App 内での購入、拡張機能 (キーボードなど)、ステッカー、App内で利用できる定期購読が含まれます。
App はお客様が所有または管理するあらゆるデバイスでご利用いただけます。
営利事業、政府機関、教育機関 (以下「エンタープライズ」という) の代表として業務を行う個人は、(i) エンタープライズが所有または管理する 1 台または複数のデバイスで 1 名の個人が使用する目的で、または (ii) エンタープライズが所有または管理する 1 台の共有デバイスで複数人が使用する目的で App をダウンロードし、同期できます。
個人が非営利目的で使用する場合についての明示的な言及はありませんが、非営利=利益0以下の営利と解釈すれば、一般的に非営利目的よりも営利目的の方が、利用制約が厳しいことから、個人が非営利目的で利用する場合も含めて、複数台インストールが可能であると判断できます(あくまで私の個人的見解です)。
3.最後に
今回は、DAWソフト購入の際に、多くの人が気になるであろう「複数台のPCにインストールできるか」という点について、Cubase, ACID, Studio One, Logic Proの4つを対象に調べてみました。
冒頭でも少しお伝えしましたが、複数台にインストール可能なDAWソフトは以下の通りです。
- Cubase(Pro/Artist/バージョン12以降のElements):インストール3台まで、同時使用1台まで
- ACID (Pro/Music Studio):同時使用2台まで(ソースネクスト版)
- Studio One:インストール5台まで、同時使用1台まで
- Logic Pro X:上限までは不明
バージョンやエディションによって事情が異なりますので、注意しましょう。