DTM用DAWソフトACID Pro 8で快適にエレキギターをライン録音する方法
今回は、DTM用DAWソフトACID Pro 8で、エレキギターをライン録音するときに活用したい3種類の小技について紹介します。
ACID Pro 8で、何も考えず、デフォルト設定のままギターを録音すると、次のような悩み(課題)にぶち当たることがあるのではないでしょうか?
- 録音中、自分のギターの音がしっかり聴けず、弾き加減がわからない
- 録音がいきなり始まってアタフタする
- ギター音の立ち上がり部分が欠落する
いずれも、録音において致命的とまではいえないものの、こうした小さなストレスがあると、制作モチベーションに影響するかもしれません。
こうした点を解決するのが、次の3つの小技です。
- 入力モニタ機能を使う
- メトロノームプリカウント機能を使う
- 録音したい部分より少し手前で録音開始する
「小技」と称している通り、いずれも簡単な操作で済むものばかりです。
これら3つの小技を駆使すれば、ギター録音作業も快適、あとは存分にベストテイクを目指して録りまくるのみです!
さぁ、それでは順にみていきましょう~
1.入力モニタ機能を使う
「録音中、自分のギターの音がしっかり聴けず、弾き加減がわからない」という悩み(課題)に対する対策です。
1-1.エレキギターを録音する2つの方法
エレキギターの音は、アンプやエフェクターで作り込むのが一般的だと思います。
その点を踏まえると、ライン録音の方法には、大きく分けて次の2つが考えられます。
- アンプ、エフェクターを通した音をPCに取り込む形で録音
- エレキギターの素の音を直接PCに取り込む形で録音し、アンプ、エフェクターなどの部分に相当する音作りはPC(DAW)上で行う
1つ目の方法は、録音後の音作りのやり直しがしづらいというデメリットがありますが、リアル機材の音を収録できるというメリットがあります。
2つ目の方法は、音作りの部分があくまでシミュレータ依存になるため、リアルさでは劣るかもしれませんが、録音後に音作りをやり直すことが容易というメリットがあります。
今回の話は、これら2つの方法のうち、2つ目の方を採用する場合を念頭に置いたものです。
1-2.エレキギター録音時に入力モニタ機能が必要な理由
さて、エレキギターを録音する場合、大抵は事前に用意したバッキングトラックを流し、それをヘッドフォンで聴きながらギターを弾くということになるでしょう。
このとき、バッキングトラックだけでなく、自分の弾いているギターの音も聴こえないと、
- リズムがわからない
- 弾き加減がわからない
という事態に陥ります。
アンプ、エフェクターを通した音をPCに取り込む形で録音(1つ目の方法)するのであれば、特に問題はないでしょう。
PCに音を取り込む(録音)ために、ギターとPCの間に接続するオーディオインターフェースは大抵、入力のモニタが可能な構成になっているため、アンプ、エフェクターを通った後のギターの音を聴くことができます。
しかし、エレキギターの素の音を直接PCに取り込む形で録音(2つ目の方法)する場合、入力をそのままモニタしても、それはアンプ、エフェクターを通った音ではないため、最終的な音とはギャップがあります。
このような音では、自分の弾いているリズムが合っているかどうかぐらいはわかるかもしれませんが、弾き加減がわからないため、弾いていてかなり違和感があるでしょう。
そこで、DAW上のアンプシミュレータ等を通した後の音をモニタすることを考えます。
そのために必要なのが「入力モニタ機能」です。
1-3.入力モニタ機能の使用方法と注意点
「入力モニタ機能」は、以下の手順で使用可能となります。
- 録音対象のオーディオトラックに対応するタイムラインの左側パネルにある「録音入力」を押す
- (入力モニタに関する設定メニューが表示される)
- 上記メニューで「入力モニタ モード:オン」を押す
この状態で「録音アーム」を有効にして、ギターを弾いてみてください。
アンプシミュレータ等で音を作っている場合、その作り込まれた音が聴こえてくるのではないでしょうか?
聴こえてこない場合、あるいは聴こえていてもプチノイズが散発する場合、オーディオインターフェースのバッファが小さすぎるのかもしれません。
そのような場合は、次の手順で、オーディオインターフェースのバッファサイズを大きくしてみると解決するかもしれません。
- 画面上部メニューの「オプション」→「ユーザー設定」を選択して「ユーザー設定」ウィンドウを表示
- 「ユーザー設定」ウィンドウ上で「オーディオデバイス」タブを選択
- 「オーディオ デバイスの種類」に、録音で使用しているオーディオインターフェース名が表示されていることを確認
- ウィンドウ下部の「詳細」を押して「オーディオの詳細設定」ウィンドウを開く
- 「オーディオの詳細設定」ウィンドウで「設定」を押すと、オーディオインターフェースのバッファサイズ設定画面が開く
最後の「オーディオインターフェースのバッファサイズ設定画面」の内容は、各オーディオインターフェースによって異なります。
従って、ここで一般的な方法を示すことはできません。
ご使用のオーディオインターフェースのマニュアル等を参照しながら、調整してみて下さい。
ただし、バッファサイズを大きくし過ぎると、ギターを弾いてから、実際に(アンプシミュレータ等を経由した)音が聴こえるまでの時間が長くなるので、ギターが弾きづらくなります。
では、どれぐらいのバッファサイズにすればよいのでしょうか?
録音時のサンプリング周波数設定にもよりますが、個人的には256サンプル以内に収めるのが望ましいと感じています。
2.メトロノームプリカウント機能を使う
「録音がいきなり始まってアタフタする」という悩み(課題)に対する対策です。
録音自体は、「録音アーム」を押して、いわば録音スタンバイ状態にした後、「録音」ボタンを押すだけで行えます。
しかし、デフォルト設定の状態では、「録音」ボタンを押すと同時に録音が始まるため、ギターを弾く態勢を十分に整えられず、アタフタしてしまうというわけです。
そんなとき、録音スタートする前に、一定期間メトロノームを鳴らしてくれる「メトロノーム プリカウント」機能を使えば便利!
この「メトロノーム プリカウント」機能は、ボタン1つで有効にできます。
そのボタンは、タイムラインの下(画面中央付近)にある、録音、再生等のボタンアイコンが並んでいるエリアの右端にあります。
このボタンの絵部分を左クリックすると、ボタン周りが白く囲われ、「メトロノーム プリカウント」機能が有効になります。
なお、録音スタートする前にメトロノームを鳴らす時間(小節数)や、メトロノーム音も変更可能です。
「メトロノーム プリカウント」を有効にするボタンの右側にある▽マークをクリックすると、これらを変更するためのメニューが表示されます。
メトロノームを鳴らす時間については、この表示メニューの
- 1小節プリカウント
- 2小節プリカウント
- 4小節プリカウント
の中から1つを選択することで、好きな長さに変更できます。
メトロノーム音については、以下の手順で設定します。
- 表示メニューの「メトロノームの設定」を押す
- 「オーディオ」タブが選択された状態で「ユーザー設定」を押すと、ウィンドウが立ち上がる
- 立ち上がったウィンドウ内に「メトロノーム サウンド」の選択部分があるため、任意のものに変更
- 「OK」を押す
ここで設定した「メトロノーム サウンド」は、この「メトロノーム プリカウント」機能使用時のみならず、通常のメトロノーム使用時にも適用されます。
3.録音したい部分より少し手前で録音開始する
「ギター音の立ち上がり部分が欠落する」という悩み(課題)に対する対策です。
録音は必ずしも曲の最初から始める必要はなく、タイムライン上のどの位置からでも録音ができます。
それを踏まえると、録音したい最初の部分にカーソルを置き、その位置から録音開始するのが自然で無駄のないやり方といえます。
が、録音開始とギターの弾き始めのタイミングが一致するとは限りません。
少なくとも人間がリズムを刻む以上、リズムのずれを完全になくすことはできません。
ギターを鳴らすタイミングが、録音開始タイミングよりも早かった場合、ギターの弾き始め(音の立ち上がり)部分は録音されず、録音音源から欠落してしまいます。
一応、そのような場合でも、音が不自然にならないようにする「高速フェード」という処理はあります。
これにより、ギターの音がスムーズに立ち上がるようにはなりますが、本来のギター立ち上がり音とは異なってしまいます。
そのため、立ち上がり音にこだわる場合は、立ち上がり音を確実に収録できるよう、録音開始位置を変更するのがお薦めです。
具体的には、本来録音が必要な位置よりも少し手前の位置から録音をスタートするようにすればよいでしょう。
録音音源の冒頭(ギターを弾き始めるまでの部分)は後でカットすればOKです。
4.最後に
今回は、ACID Pro 8で何も考えず、デフォルト設定のままギターを録音したときに生じると考えられる、
- 録音中、自分のギターの音がしっかり聴けず、弾き加減がわからない
- 録音がいきなり始まってアタフタする
- ギター音の立ち上がり部分が欠落する
という悩み(課題)を解決し、ギター録音作業を快適にするための以下3つの小技を紹介しました。
- 入力モニタ機能を使う
- メトロノームプリカウント機能を使う
- 録音したい部分より少し手前で録音開始する
いずれもACID Pro 8で用意された基本機能の使用、あるいは機能使用時のちょっとした工夫といったレベルのもので、簡単な操作で済むものばかりです。
ですが、これらのちょっとした操作によって、録音作業のやりやすさが大きく変わると思います。
例えば「入力モニタ機能」。
私が初めに使用したACIDシリーズのDAWソフト「ACID Music Studio 8」では、この「入力モニタ機能」が使えませんでした。
この「ACID Music Studio 8」でギター録音作業を行っていた時期も長かったですが、最終的な音イメージと全く異なる音を聴きながら、エレキギターを弾いて録音するというのは、やはり非常にやりづらいものでした。
ACID Proに移行してからは、最終的な音イメージのギター音を聴きながら録音できるようになって快適です。
なお、3つ目に挙げた「録音したい部分より少し手前で録音開始する」というのは、録音時の立ち上がり音を確実に収録するための工夫です。
それはそれで必要な工夫ですが、より本質的な対策としては、正確なリズムワークの追求ということが挙げられるでしょう。
やり直しの効くDTMといえども、根本的には楽器演奏の習熟が重要ということですね。
というわけで、これからも精進を続けていきます!