洋楽っぽい邦楽の歌を作る方法(英語っぽい日本語のアプローチ)
ロックを日本語で歌うべきか、英語で歌うべきか?
ロックに日本語は合わないのではないか?
そうした議論、いわゆる「日本語ロック論争」なるものがかつてありましたが、
最近の(といってもここ数十年以上前からの)J-Pop/Rockをみていると、
日本語ロック/ポップが自然に成立しており、
そのような論争自体、無意味になっているように思えます。
「自然に成立」といいましたが、これには大きく分けて
- 日本語を日本語として聴かせて成立
- 日本語を英語っぽく聴かせて成立
の2パターンがあります。
どちらにもそれぞれの良さがありますが、
今回は、後者「日本語を英語っぽく聴かせて成立」の方に焦点を当て、
洋楽っぽい邦楽(英語っぽい日本語の歌)を作る方法をお伝えします。
ズバリこんなあなたにおすすめの内容です。
- 洋楽っぽい邦楽(英語っぽい日本語の歌)を作りたい
- 洋楽っぽい邦楽(英語っぽい日本語の歌)の構造を知りたい
具体的には、次の2点に焦点を当てて話を進めていきます。
- 譜割の工夫(歌詞の乗せ方):英語っぽくなるような歌の作り方
- 歌唱の工夫(歌い方):英語っぽくなるような歌い方
英語っぽい日本語の歌を作るメリットをざっと挙げると次の2点。
- 英語が苦手な人でも洋楽っぽい曲(歌)を作れる
- 言葉遊びで楽しめる
そもそも歌を作るのにメリット、デメリットという議論も野暮なものですけどね・・・
それでは以下、詳しくみていきましょう!
1.譜割の工夫(歌詞の乗せ方)
「歌メロに対してどのように歌詞を割り付けるか」
それ次第で歌のノリが大きく変わってきます。
英語の歌っぽくしたい場合、次の4つを意識するとよいでしょう。
- 英語の音に近い日本語を使う
- 1つの音符に複数の音節を割り付ける
- 一部を母音脱落させる
- 漢語(音読みの連続)を使う
以下、1つずつ説明していきます。
1-1.英語の音に近い日本語を使う
言葉の例としては、次のようなものが挙げられるでしょう。
- くらい:cry
- つらい:try
- ない:night
- (~)たい:tight
- (~)ねば:never
- (~)でいたい:daytime
- (~)じゃない:the night
- (~)ていく:take
- 上:way
ただし、こうした言葉を選ぶだけでは不十分なことが多く、大抵の場合、以降に示す工夫も併せて必要となります。
1-2.1つの音符に複数の音節を割り付ける
上で挙げた、「くらい」、「つらい」、「ない」といった音を、単純に一文字一音で割り付けると、英語っぽくなりません。
英語っぽくするためには、1つの音符に複数の音節を割り付けるようにします。
例えば「シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~」(by Mr.Children)のBメロで出てくる 世間は暗い
の暗い
(くらい)は「シ」一音、
サビで出てくる くらい
(2:23~、4:08~)は、「ミ」一音にそれぞれ割り付けられています。
これにより、英語的な弾み感が増し、洋楽っぽい雰囲気が強くなります。
1-3.一部を母音脱落させる
先ほど「1つの音符に複数の音節を割り付ける」ことを挙げましたが、そうした譜割と合わせてよく使われる手法が
「日本語音の母音脱落」
です。
先ほど挙げた「シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~」におけるくらい
の例でも、「く」の部分の母音は全部、またはほとんどなくなっています。
その他の例としては、同じく「シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~」の歌い出し 愛想なし
(0:31~)の「し」も挙げられます。
ここでは「し」の母音「い」がなくなり、ほとんど息の音だけになっています。
もっとも、息だけの「し」の音が英語的かというと微妙ですが、
日本語歌詞の中でもこうした「母音脱落した音」をちょくちょく挟み込むことで、
英語に近い聴感を実現することが可能です。
1-4.漢語(音読みの連続)を使う
漢字の音読みのゴツゴツした(?)音もまた、英語的なノリの演出に適しています。
上でも取り上げた「シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~」の場合、次のような漢語が出てきます。
単純
(たんじゅん)(0:35~)等身大
(とうしんだい)(0:59~)照準
(しょうじゅん)(2:36~)
これらの漢語と音の響きが近い英単語などは見当たりませんが、
1-2で挙げた「1つの音符に複数の音節を割り付ける」処理とも相まって、
ここでも英語的な弾み感が出ていることがお分かりいただけるかと思います。
2.歌唱の工夫(歌い方)
1で述べた譜割の工夫と合わせて、あるいは譜割は普通でも、次の3つを意識した歌い方にすることで、英語っぽい雰囲気を演出することができます。
- 発音を英語化する
- 子音を強調する
- 強弱を強調する
1つ目はそのままといえばそのままですけど・・・
ともあれ、以下、1つずつ説明していきます。
2-1.発音を英語化する
英語ならではの発音を強調する形で「日本語の発音を英語化」することで、洋楽っぽいテイストになります。
母音側、子音側、どちらのアプローチも可能です。
まずは母音側のアプローチ例。
- 「あ」を、「あ」と「え」の中間ぐらいの発音に変える
- 「い」を、「い」と「え」の中間ぐらいの発音に変える
- 「う」を、「う」と「お」の中間ぐらいの発音に変える
- 「あ」と「う」の中間ぐらいの発音を盛り込む
「ニシエヒガシエ」(by Mr.Children)のBメロ終わり 迷宮みたいな
(1:38~)の「な」は、これらのうち
4番目の例「「あ」と「う」の中間ぐらいの発音を盛り込む」
に当てはまります。
ここでの「な」は、日本語本来の「な」の音に比べると母音がやや曖昧で、「な」と「ぬ」の間ぐらいの音に聞こえます。
英単語でいえば「Liner」の末尾「ぬぁー」の部分に近いでしょうか。
続いて子音側のアプローチ例。
- ら行の音を"r"音に変える
- た行の"t"音を強調する
- さ行、ざ行の音を"th"音(舌を噛む)に変える
- ば行の音を"v"音(下唇を噛む)に変える
- 「ふ」を"f"音(下唇を噛む)に変える
1つ目にある"r"音というのは、いわゆる舌をそり上げる発音です。
「This Way」(by LOVE PSYCHEDELICO)の1番Aメロ終盤、愛の唄
(あいのうた)(0:12~)の「た」は、これらのうち
上から2番目の例「た行の"t"音を強調する」
に当てはまります。
なかなか説明しづらいですが、とにかく"t"音が強調され、日本語らしからぬ「た」になっていることがお分かりいただけるかと思います。
2-2.子音を強調する
日本語に比べて、英語は子音が強調されて発音される傾向にあります。
そのため、日本語詞であっても「子音を強調して歌う」ことで、英語っぽい雰囲気を出すことができます。
「シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~」の例では、1番Aメロの肝心な
(かんじんな)(0:38~)の「か」のk音などに顕著です。
2-3.強弱を強調する
日本語ではあまり発音の強弱を意識することがありませんが、英語では強弱が重要となります。
上で挙げた「子音を強調する」だけでもかなり英語っぽい歌い方になりますが、強弱もしっかりつけるとさらに効果が上がります。
「シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~」の例では、Aメロ(0:31~)から派手に強弱が付いており、
元々の詞の乗せ方とも相まって、かなり英語っぽいテイストになっています。
ちなみにライブ版はこちら。同じ歌でも、少し強弱を抑えた歌い方なので、英語っぽい印象はいくぶん弱まっています(これが悪いという意味ではありませんよ、念のため・・・)。
「英語っぽい歌にしたければ歌い方も重要」という好例ですね。
3.最後に
以上、洋楽っぽい邦楽(英語っぽい日本語の歌)を作る方法についてお伝えしてきました。
要点をまとめます。
まず、大方針として次の2つの工夫が必要です。
- 譜割の工夫(歌詞の乗せ方):英語っぽくなるような歌の作り方
- 歌唱の工夫(歌い方):英語っぽくなるような歌い方
譜割の工夫(歌詞の乗せ方)については次の4つ。
- 英語の音に近い日本語を使う
- 1つの音符に複数の音節を割り付ける
- 一部を母音脱落させる
- 漢語(音読みの連続)を使う
歌唱の工夫(歌い方)については次の3つ。
- 発音を英語化する
- 子音を強調する
- 強弱を強調する
全部適用するのは難しいかもしれませんが、できるだけ盛り込むことで、洋楽っぽい邦楽(英語っぽい日本語の歌)を作れることでしょう。
例として挙げた動画を以下にまとめて再掲します。
冒頭でもお伝えしましたが、英語っぽい日本語の歌を作るメリットをあえて挙げると次の2点。
- 英語が苦手な人でも洋楽っぽい曲(歌)を作れる
- 言葉遊びで楽しめる
英語に慣れていない人間(私もその一人です)が英語の歌詞を作るとなると大変です。
検索、検索の嵐ですから・・・
ともあれ、今回のこの記事が、
- 洋楽っぽい邦楽(英語っぽい日本語の歌)を作りたい
- 洋楽っぽい邦楽(英語っぽい日本語の歌)の構造を知りたい
といったあなたのご参考になれば幸いです。