ギターケース+調湿剤(湿度調整剤)で本当に大丈夫なのか?~実際に検証してみた(簡易ながら)~
(写真はイメージです)
今回は
「ギターケース(ハードケース)+調湿剤(DRY CREW)」(基本的に密閉)で湿度を数か月間測定してみた結果
を中心にお伝えします。
ズバリ、こんな方に特におススメの内容です。
- 「ギターケース(ハードケース)+調湿剤(湿度調整剤)」で本当に大丈夫なのか気になっている
- 調湿剤(湿度調整剤)として比較的安価なGRECOのDRY CREWは使い物になるのか気になっている
ギターを長期間保管する、たまにしか弾かないときなどによくいわれる保管方法「ギターケース(ハードケース)+調湿剤(湿度調整剤)」。
調湿剤(湿度調整剤)というのは、文字通り「湿度を調整してくれる剤」ですが、「ギターケース(ハードケース)+調湿剤」で、どの程度の湿度変化に耐えられるものなのでしょうか?
最初に結論をざっとお伝えしておきます。
- ケース外湿度30%台~70%台の環境であれば、「ギターケース(ハードケース)+調湿剤(DRY CREW)」(基本的に密閉)でケース内湿度40%台~60%台を保つ
グラフでみてみましょう。
少なくとも、
ギターケースを置く部屋の湿度が極端に高かったり、低かったりすることがなければ、
「ギターケース(ハードケース)+調湿剤(湿度調整剤)」の保管スタイルで概ね安心できそうです。
この方法、ギターケースに調湿剤(湿度調整剤)を入れておくだけですから、保管方法としては簡単でおススメです。
(もちろん、湿度が気になる方はギターケース内の湿度を定期的にチェックした方が良いと思いますが・・・)
ちなみに、調湿剤(湿度調整剤)を期限限界まで(12か月間)使用し続けた結果については、以下記事にまとめていますので、ご興味のある方はこちらもご覧いただければ、と思います。
それでは以下、詳しくみていきましょう!
1.調湿剤(湿度調整剤)とは
まず、今回の話に出てくる「調湿剤(湿度調整剤)」とはどういうものなのか、ざっと触れておきます。
冒頭お伝えしたように、文字通り「湿度を調整してくれる剤」というわけですが、もう少し具体的な表現をすると、
「湿度の高いときには下げ、湿度の低いときには上げる作用があるアイテム」
となります。
こういうと、
「そんなうまい話があるのか??」
そう思われる方もいらっしゃることでしょう。
今回の検証もそんな疑いから始まっています。
「湿度を調整」といっても、恐らく「対応可能な湿度の範囲」というものもあるでしょうし、
いつまでも使えるものでもないはずです。
今回の検証に使用したGRECOの調湿剤「DRY CREW」では、6~12か月ごとに交換するよう注意書きがあります。
交換頻度が随分アバウトなように思いますが、これは実際の使用環境にもよるでしょうし、明確な交換時期を定めにくいのだと思います。
このGRECOの調湿剤「DRY CREW」、私も長い間使用していますが、なるべく6か月ごとに交換するようにしており、それで少なくとも今までに大きなトラブルに遭遇したことはありません(定期的にギター自体をリペアに出していることもありますが)。
なお、ギターケースの中に調湿剤(湿度調整剤)を入れていても、ギターケースの内と外の湿度差が大きい場合、
ギターケースを長時間開けっ放しにすれば、ギターケースの中の湿度が外の湿度に大きく引きずられてしまいます。
「湿度を調整する」
といっても、部屋全体の湿度を調整する力まではないと思いますので、
- ギターを出したり戻したりするとき
- ギターケース内の湿度を確認するとき
は素早く(といっても安全に)ギターケースを開けて閉じる必要があるかと思います。
2.「ギターケース(ハードケース)+調湿剤(湿度調整剤)」(基本的に密閉)の湿度変化検証
(写真はイメージです)
「ギターケース(ハードケース)+調湿剤(湿度調整剤)」で本当に湿度は保たれるのか??
という点を明らかにするため、
GRECOの調湿剤「DRY CREW」を入れたギターケース(ハードケース)の内と外(部屋)の湿度を、数か月ほど測定して検証してみました。
以下、検証方法、検証結果、その他(詳細事項)という流れで、その内容をお伝えしていきます。
2-1.検証方法
以下要領の測定を数か月間(約4.5か月)行いました。
- ギターケース(ハードケース)の中にGRECOの調湿剤「DRY CREW」(ブルーベリー)1個を投入(測定開始の約2か月前)
- 同じ湿度計(PICK BOY(ピックボーイ)のAA-150)でギターケース内と外の湿度を(ほぼ同時に)測定する
湿度測定は毎日というわけではありませんが、ギターケース外の湿度は30~70%台と幅広く変化しておりますので、
「ギターケース内の湿度は大丈夫か?」
を検証するには十分だと思います。
なお、今回測定でギターケース内に入れた湿度計(PICK BOY(ピックボーイ)のAA-150)の湿度表示値については、
私が普段使っている(そして信頼している)デジタル時計(NQ501S)(ギターケースには入らないサイズ)の湿度表示値に比べると少々高めに出る傾向にあります。
(この件については、本ブログ内の以下記事でも取り上げていますので、ご興味のある方はご覧いただければ、と思います。)
ギターケース内外の湿度傾向を同じ湿度計で比較するだけであれば、無視してもよいのでしょうが、やはり
「ギターケース内の妥当な湿度値を知りたい」
ということで、次のような対応をとりました。
- ギターケース外の湿度は、ギターケース内に入れたものと同じ湿度計(PICK BOY(ピックボーイ)のAA-150)に加え、デジタル時計(NQ501S)でも(ほぼ同時に)測る(記録する)
- ギターケース外の2つの湿度表示値(PICK BOY(ピックボーイ)のAA-150とデジタル時計(NQ501S))の関係から、ギターケース内に入れた湿度計(PICK BOY(ピックボーイ)のAA-150)の表示値を換算する
少々回りくどいですが、これによって
疑似的に、普段使っている(そして信頼している)デジタル時計(NQ501S)でギターケース内の湿度を測定できる
ことになりますので「ギターケース内の妥当な湿度値」を知ることができます。
(そもそももっと精度のよい湿度計を使えばそれで済む話なのですが、PICK BOY(ピックボーイ)湿度計AA-150の特性も併せて測定したかったのもあって、このような形をとりました。)
2-2.検証結果
最初に結果の概要をお伝えしておきます。
- 外の湿度(30%台~70%台)には多少引きずられるものの、概ね期待通りギターケース内の湿度が保たれる(40%台~60%台)
さすがに「微動だにしない」わけにはいかないようですが、概ね期待通りの結果で、ひとまず安心しました。
少し詳しくみていきましょう。
まず、2-1で述べたPICKBOY(ピックボーイ)湿度計AA-150の湿度表示値補正のためのグラフを示します。
- 横軸:PICKBOY(ピックボーイ)湿度計AA-150表示値[%]
- 縦軸:時計表示値[%]
概ね直線の関係となっており、近似式の傾きは約0.86、切片は約0.59となっています。
なお、前回記事でも似たようなグラフを載せていますが、
- 横軸と縦軸が逆(前回はPICKBOYの特性を知るため、今回はPICKBOYの表示値を換算するため、とその目的が異なるため)
- 測定データ点数(区間)が異なる(今回測定分に対応したデータ点のみを使用)
といった違いがあるため、異なるグラフとなっています。
以下、本題の結果に関するグラフなどについては、
- ギターケース内の湿度は上記近似式で換算した値
- ギターケース外の湿度はデジタル時計の湿度表示値
それでは本題へ。
以下に、ギターケース内、ギターケース外の湿度値を時系列順に並べたグラフを示します(冒頭でお見せしたものと同じグラフ)。
- 横軸:データNo.(時系列順)
- 縦軸:湿度[%]
ギターケース外の湿度(青色)の変化(30%台~70%台)に対して、ギターケース内の湿度(橙色)の変化はかなり緩やか(40%台~60%台)であることがわかります(ある程度引きずられてはいますが)。
つまり、
「ギターケース(ハードケース)+調湿剤(DRY CREW)」(基本的に密閉)によって湿度変化をある程度防げている(湿度対策できている)
と推し量ることができます。
よく、ギターにとっての最適湿度値として50%という数値が挙がりますが(これは温度などによっても変わってくるものだと思いますが)、
今回の測定結果のように、ギターケース内の湿度が40%台~60%台の変化に抑えられていれば「ひとまず安心」といってよいでしょう。
2-3.その他
2-2で今回の検証結果の主要な点についてお伝えしてきましたが、もう少し細かな事項も含めて説明していきます。
今回の結果で確認できたこと、できていないことをまとめると、およそ以下の通りとなります。
- 少なくとも「ギターケース(ハードケース)+調湿剤(DRY CREW)」(基本的に密閉)で湿度がそれなりに保たれることは確認
- 調湿剤(湿度調整剤)を入れなかった場合のデータはとれていないので、調湿剤(湿度調整剤)そのものの効果は不明
- 調湿剤(湿度調整剤)の寿命までは確認できていない
今回の検証で「ギターケース(ハードケース)+調湿剤(DRY CREW)」(基本的に密閉)の効果はそれなりにありそうだとわかりましたが、
ギターケース単体の効果、つまり調湿剤(湿度調整剤)を入れなかったときのデータはとっていないため、
「ギターケースだけでも湿度変化を抑制できたのでは?」
という疑問を払拭しきることはできません。
また、調湿剤(湿度調整剤)には寿命があるのですが、今回の測定では調湿剤(湿度調整剤)投入期間は半年強、測定は4.5か月程度と比較的短く、
測定途中で「調湿剤(湿度調整剤)の効果がそろそろなくなってきたな~」ということもなかったため、
「どのぐらいの期間で調湿剤(湿度調整剤)の効果がなくなるのか?」
という疑問についても答えが得られていません。
いかんせん、自分の大切なギターを入れているわけですから、調湿効果がなくなってしまっては困る・・・
そういうわけで早めの交換を行いました。
現在もこうした湿度測定を継続中ですが、今度はもう少し粘ってみようと思います(湿度変化の傾向をみながら)。
3.最後に
以上、
「ギターケース(ハードケース)+調湿剤(DRY CREW)」(基本的に密閉)で湿度を数か月間測定してみた結果
を中心にお伝えしてきました。
ここでその概要について、もう一度触れておきます。
- ケース外湿度30%台~70%台の環境であれば、「ギターケース(ハードケース)+調湿剤(DRY CREW)」(基本的に密閉)でケース内湿度40%台~60%台を保つ
少なくとも、
ギターケースを置く部屋の湿度が極端に高かったり、低かったりすることがなければ、
「ギターケース(ハードケース)+調湿剤(湿度調整剤)」の保管スタイルで概ね安心できそうです。
この方法、ギターケースに調湿剤(湿度調整剤)を入れておくだけですから、保管方法としては簡単でおススメです。
(もちろん、湿度が気になる方はギターケース内の湿度を定期的にチェックした方が良いと思いますが・・・)
特に、今回取り上げたGRECOの調湿剤(DRY CREW)は比較的安価に入手できるので、コスト面でもさほど大きな負担感はないと思います。
仮にGRECOの調湿剤(DRY CREW)の単価が600円(本価格は試算上の仮定値であり、実際値は異なり得ます)、
GRECOの調湿剤(DRY CREW)で推奨される交換頻度(最短)6か月で交換した場合、
1本のギターにかかるコストは年1,200円です。
人やそのときの価格情勢などにもよると思いますが、きっと定期的なギター弦交換よりは安くなるケースが多いでしょう。
その程度のコストで、ギターにつきものの湿度トラブルを未然に防ぎ得るわけですから、コスパ的にも問題ないと思います。
さらにいえば、このGRECOの調湿剤(DRY CREW)、アロマ・シリーズとして色々な香りのものが出ているので、商品選びも楽しいですよ。
これら以外にも色々あり、正直少々種類が多すぎる気もしますが、単価が比較的安いので、その気になれば全制覇を目指すこともできるかと思います。
といっても、私は今のところブルーベリーしか使っていませんが・・・
今回の記事が
- 「ギターケース(ハードケース)+調湿剤(湿度調整剤)」で本当に大丈夫なのか気になっている
- 調湿剤(湿度調整剤)として比較的安価なGRECOのDRY CREWは使い物になるのか気になっている
といった方のご参考になれば幸いです。