DTM、再生環境耐性(汎用性)の高いミックス音源を仕立てるために
今回はDTMにおいて、幅広い再生環境に対応可能な汎用性の高いミックス音源を仕立てるのに役立つ方法をお伝えします。
ズバリ、こんな方に特におススメの内容です。
- DTMのミックス(ミキシング)で悩んでいる
- DTMのミックス(ミキシング)、再生環境によってイマイチになったりして悩んでいる
- スピーカー、ヘッドフォンでどちらにどれだけ合わせたらよいかわからない
最初に結論をお伝えします。
「モノラルミックス状態での確認も併用するとよい」
ヘッドフォンとスピーカーで音が変わりますが、その一因として
- ヘッドフォンは左右分離のよいステレオ
- スピーカーは多少左右混じったステレオ
といった違いが挙げられます(ステレオ音源を聴く場合)。
ですから、
- 左右完全混合のモノラル
- 左右完全分離のステレオ
両方で確認して間を取るようにすれば、落とし所が見えてくるはずです(ここではヘッドフォンで左右が完全に分離できているとみなす)。
もっとも、スピーカーでの音の混じり方は、スピーカー配置条件などによって発生する音の変化も影響したりするので、実際にはもっと事情は複雑ですが、
少なくとも左右完全混合のモノラルミックス状態での確認をしておくことは、より幅広い再生環境で聴ける音源を仕立てるのに有益です。
それでは以下、詳しくみていきましょう!
1.モノラルミックスの確認が必要なワケ
ステレオは左右で異なる音波形になっているがゆえに、広がりを感じるわけです。
音は波で振動しているものであり、単純な例でいうと、図のような変化をするものです。
ステレオの場合、このような振動パターン(実際にはこれよりももっと複雑なことが一般的ですが)が左右で異なっているわけです。
ヘッドフォンやイヤフォンの場合、左右の耳それぞれ(かなりのレベルで)独立して音を聴けますが、
スピーカーの場合は多少なりとも左右の音が空間上で混じります。
実際には、スピーカーの配置条件などによって、「左右の音がそれぞれ変化した上で混じる」といったことが往々にしてあるため、スピーカーでの音の混じり具合の挙動は複雑ですが、
最も極端な例を挙げると、以下の図のように2つの波形が互いに反転しているような関係の場合、これらを単純に重ね合わせと音が消えます。
ですので、少なくとも左右の音がそのまま重なった状態であるモノラルミックスでの確認をしておくことで、
「より幅広い再生環境で聴けるミックス音源」を仕立てることができます。
以上のような事情で「モノラルミックスの確認が必要」というワケです。
2.確認ポイント
では、具体的にどのような点を確認していけばよいでしょうか?
楽器単体でステレオ音源を使っている場合は、その音源をモノラル化したときの音色の変化も問題になってきたりしますが、最も基本的な注意点は音量バランスです。
ステレオ、モノラルにおける音量バランス確認観点としては、例えば以下2点が挙げられます。
- ステレオでもセンターパートが十分聴こえるか
- モノラルでも左右パートが十分聴こえるか
ステレオ音源をモノラル化すると、左右パートよりもセンターパートが強調される傾向にあります。
ですので、
- ステレオでは十分聴こえていた左右パートがモノラルだと聴きづらい
- モノラルでは十分聴こえていたセンターパートがステレオだと聴きづらい
ことが往々にしてあり得ます。
「ステレオとモノラルで全く同じ聴こえ方になる」
ことはあり得ないにしても、
「違和感のないレベル」
にまで調整しておくことは大切です。
バランスの取り方としては、
- ステレオで聴いたときに大きくなりすぎない程度に左右パートの音量を上げる
- モノラルで聴いたときに大きくなりすぎない程度にセンターパートの音量を上げる
といったようにするとよいでしょう。
ここでいう「音量を上げる」とは、単純に「音量メーターを上げる」のみならず、「パート(楽器)間の帯域を調整する」ことも含まれます。
なお、マスタリングツールとして有名なOzoneシリーズ(iZotope社)をプラグインとして使うと、こうした「強制モノラル」状態が簡単に作れますのでおススメです(バージョン、エディションによるかもしれませんが、少なくともOzone 9 ElementsやOzone 9 Advancedだと可能)。
3.最後に
以上、DTMにおいて、幅広い再生環境に対応可能な汎用性の高いミックス音源を仕立てるのに役立つ方法をお伝えしてきました。
ここでもう一度要点をまとめます。
まず基本的な考え方として以下。
- ヘッドフォンでは左右分離のよいステレオモニタが可能
- スピーカーでは左右の音が多少なりともモニタ空間上で混じる
- 従って「左右完全混合のモノラル」、「左右完全分離のステレオ」の両極状態でバランス調整するのが有力な一手
もっとも、スピーカーでの音の混じり方は、スピーカー配置条件などによって発生する音の変化も影響したりするので、実際にはもっと事情は複雑ですが、
少なくとも左右完全混合のモノラルミックス状態での確認をしておくことは、より幅広い再生環境で聴ける音源を仕立てるのに有益です。
ステレオ、モノラル双方の確認に基づく音量バランスの取り方の例としては以下。
- ステレオで聴いたときに大きくなりすぎない程度に左右パートの音量を上げる
- モノラルで聴いたときに大きくなりすぎない程度にセンターパートの音量を上げる
必ずしも、両方で満足のいくミックスになるとは限らないですが、間をとるようにすると、対応範囲は広がるはずです。
今回の記事が
- DTMのミックス(ミキシング)で悩んでいる
- DTMのミックス(ミキシング)、再生環境によってイマイチになったりして悩んでいる
- スピーカー、ヘッドフォンでどちらにどれだけ合わせたらよいかわからない
といった方のご参考になれば幸いです。