科学色の強い(?)ボイトレ本「高い声で歌える本 Complete Edition」を読んでみた
(写真はイメージです)
今回は、Kindle本としても入手可能なボイトレ本
「高い声で歌える本 Complete Edition」
を、実際に読んでみた感想を交えて紹介します。
ズバリ、こんな方に特におススメの内容です。
- ボイトレの理論面をしっかり学びたい
- 科学的なことが好き
この本最大のメリットを1つ挙げると、
「理論的な話が詳しい」
ところです。
以前紹介した別のボイトレ本「禁断のボイストレーニング: 伝説のボイストレーナー達は何を伝えたかったのか」も理論的な話が詳しい、タメになる本だったのですが、
この本はそれ以上だと思います(特に、扱う内容の幅広さという意味で)。
「禁断のボイストレーニング~」のベースになっていたフースラーの考えについても、ある程度相対化して(他の考え方と併せて)紹介されており、歴史の流れや現代からの視点でみたときの位置づけがわかります。
また、トレーニングメニューも基礎的なものから応用的なもの(高音発声の強化につながる)まで、幅広く用意されており、
非常に充実した一冊といえるかと思います。
もちろん、メリットばかりではなく、デメリットもいくつかあるにはあるのですが、それは後ほどご紹介していきたいと思います。
というわけで以下、詳しくみていきましょう!
1.全体の特徴
この本は、何度か改訂されており、2021年8月23日時点では今回紹介する版(Complete Edition)が最新です。
2021年8月23日時点、旧版も販売されているようですので、購入の際は注意が必要です。
まず、この本の全体的な特徴をいくつか挙げてみます。
- トレーニング用付属音源は無料ダウンロード可(公式ページから)
- 前半は理論的な話、後半はトレーニングメニューの紹介
- デス声のトレーニングメニューも紹介されている(男性用のみ)
トレーニング用付属音源のダウンロードができる公式ページは以下です(検索エンジンで普通にヒットする一般公開ページ)。
トレーニングメニューはこの本の後半で紹介されており、トレーニングフレーズの譜面、要領説明、説明図などが載っています。
一部トレーニングメニューは付属音源に対応していませんが、本を見ることで、こうしたトレーニングも自分で実施することができます。
なお、トレーニングメニューの最後はデス声(男性用のみ)になっています。
「高い声で歌える本」という本で、低音のデス声のメニューが入っているというのは意外でした。
2.本
(写真はイメージです)
ここではこの本自体のメリット、デメリットを挙げていきます。
2-1.メリット
私が感じた、この本のメリットは以下2点です。
- 理論的な話が詳しい
- トレーニングメニューが豊富
1つ目「理論的な話が詳しい」は、冒頭でも少しお伝えした通り、この本最大のメリットだと思います。
筋肉の話から、声の成分分析の話まで、興味深いところがたくさんあります。
また、「禁断のボイストレーニング~」のベースになっていたフースラーの考えについても、ある程度相対化して(他の考え方と併せて)紹介されており、歴史の流れや現代からの視点でみたときの位置づけがわかります。
なお、この本と同じ著者(高田三郎さん)の別本「新・ヴォーカリストのための全知識 新装版」があると、理論面の理解の助けになりそうです。
声帯の動きの図などは、「新・ヴォーカリストのための全知識 新装版」の方が詳しいぐらいですので・・・
ただし、「新・ヴォーカリストのための全知識 新装版」は、そのタイトル通り総合的な話の本なので、声帯の図だけ狙いで買うのは正直もったいない気がします。
もちろん総合的な話を読みたい人は思い切って購入するのもアリだと思いますが、
そうでない場合は、この本が安くなっていたり、AmazonのKindle Unlimited利用中にこの本がKindle Unlimited(読み放題)の対象となっていたりするときに、一読してみることをおススメします。
続いて、2つ目の「トレーニングメニューが豊富」について。
付属音源1ファイルに1メニューが含まれていますので、音源ファイル数で見てみましょう。
音源ファイルは男性用、女性用、子供用の3つに分かれており、それぞれ以下となっています。
- 男性用:39
- 女性用:38
- 子供用:38
男性のメニュー数が1つ多いのは、デス声があるためです。
この中に含まれている内容をキーワード的にざっと挙げると
- ハミング
- スケール練習
- リップロール
- タングロール
- ブレス
- ファルセット
- 高音発声
- デス声
といったところになります。
毎日フルセットでやるのは大変だと思いますので、筆者が毎日実施を推薦している9メニューと、時間と自分の状況を鑑みて選んだメニューを実施していくのがよいかと思います。
2-2.デメリット
私が感じた、この本のデメリットは以下1点です。
- 声の出し方についての言及が少ない
この本は理論的な話は詳しいのですが、
「それ(理論)と声の出し方がどうつながるのか」
が見えてきません。
例えば「声帯の振動パターンを変える」
といっても、どうすれば変えられるのか、理解体得することは困難です。
もちろん、トレーニングメニューのページで、要領の説明、図解による説明はありますが、理論部の説明ほど詳しくはありません。
ただ幸いなことに、付属音源には手本ボイスも収録されているので、
「手本ボイスに近づくように色々類推しながら工夫してみる」
ことはできるかと思います。
3.付属音源
続いて、付属音源のメリット、デメリットを挙げていきます。
3-1.メリット
私が感じた、この付属音源のメリットは以下2点です。
- 1ファイル1メニューで使いやすい
- ファイル名を見て内容を思い出せるので、トレーニングしやすい
付属音源ファイルは、トレーニングメニューごと、対象層(男性、共通、女性、女性&子供、子供)ごとに分かれているので、扱いやすいです。
また、トレーニングの内容が頭に残っていれば、ファイル名を見て内容を思い出せるようになると思います。
そうなると、これからやろうとしているトレーニングに対して、どのファイルを使えばよいかがすぐわかるので、スムーズにトレーニングを進めていけるかと思います。
3-2.デメリット
私が感じた、この付属音源のデメリットは以下1点です。
- 手本ボイスの収録パターンにやや難あり
具体的には以下4点が挙げられます。
- 高音部の手本ボイスが少ない
- 手本ボイスが入っていないものが一部ある
- 手本ボイスありの部分しかないものもある(例:ブレストレーニング)
- 男性以外用の付属音源もあるが、男性声の手本ボイスが収録されている
最も痛いのが「高音部の手本ボイスが少ない」こと。
「高い声で歌える~」と題しているのであれば、高音の手本ボイスもたくさん収録していただきたいと思いました。
「低音の手本ボイスを聴いて、そこから高音の理想ボイスを想像する」のは困難でしょうから(特に高音が上手く出せない人にとっては)・・・
4.最後に
以上、Kindle本としても入手可能なボイトレ本
「高い声で歌える本 Complete Edition」
を、実際に読んでみた感想を交えて紹介してきました。
最後にもう一度要点を振り返ります。
まず、この本の特徴。
- トレーニング用付属音源は無料ダウンロード可(公式ページから)
- 前半は理論的な話、後半はトレーニングメニューの紹介
- デス声のトレーニングメニューも紹介されている(男性用のみ)
トレーニング用付属音源のダウンロードができる公式ページは以下です(検索エンジンで普通にヒットする一般公開ページ)。
なお、デス声のトレーニングメニューは男性用のみとなっていますのでご注意を。
そして、私の感じたメリットは以下4点。
- 理論的な話が詳しい
- トレーニングメニューが豊富
- (付属音源)1ファイル1メニューで使いやすい
- (付属音源)ファイル名を見て内容を思い出せるので、トレーニングしやすい
これらの中でも最大のメリットは「理論的な話が詳しい」こと。
特定の理論に依拠せず、総括して述べているところがあるのも良いです。
続いて、私の感じたデメリットとして以下2点。
- 声の出し方についての言及が少ない
- (付属音源)手本ボイスの収録パターンにやや難あり
この中でも特に厄介なのは「声の出し方についての言及が少ない」でしょうか。
理論的な話が詳しいだけに、そこは何とも惜しいところですね。
基本的には、楽に声が出て、それが理想の声なのであれば「良い」ということになるのでしょうが・・・
ともあれ、今回の記事が
- ボイトレの理論面をしっかり学びたい
- 科学的なことが好き
といった方のご参考になれば幸いです。