マスタリングを複数曲、簡単に手っ取り早く行う方法
(写真はイメージです)
今回は複数曲(アルバムやEPなど)のマスタリングを、簡単に、手っ取り早く行いたいときに使える方法をお伝えします。
特に以下のような方におススメの内容です。
- マスタリングを手早く行いたい
- 自分で聴くためだけだが、一通り音量ぐらいはちゃんと上げておきたい
- ACIDシリーズを使っている
- Ozoneシリーズを使っている
今回お伝えする方法は、そこまで細かい調整が必要ない場合に有利で、
メリットとデメリットは以下の通りです。
- (メリット)1曲ずつDAWソフトを立ち上げる必要がない
- (メリット)1曲ずつプラグインを挿入する必要がない
- (デメリット)曲ごとの細かな調整には不向き
それでは以下、詳しくみていきましょう!
1.大まかな手順
基本的には以下の手順を実行します。
- 全対象曲オーディオファイルをDAWプロジェクトに読み込ませる
- 全対象曲オーディオファイル(の波形)をDAWプロジェクト1トラックに順々に並べる
- 全対象曲オーディオファイルを並べたトラック、またはマスタトラックにマスタリングプラグインを挿入
- マスタリングプラグイン内設定
- 対象曲1曲ごとにレンダリング(バウンス)
この方法では、マスタリングプラグインの設定が共通となるため、以下のメリットがあり、比較的楽にマスタリング後の音源ファイルを得られます。
- 1曲ずつDAWソフトを立ち上げる必要がない
- 1曲ずつプラグインを挿入する必要がない
しかし、場合によっては、プラグイン設定やその他(音量など)をある曲だけ、または各曲で変えたいことがあるかもしれません。
もっと細かい場合だと、これらを曲の途中で変えたいということも・・・
そのような場合は以下どちらかの方法をとるとよいでしょう。
- オートメーションを使用する
- 特定のオーディオファイルに対してプラグインを挿入する
1つ目で挙げた「オートメーション」は、プラグイン設定値(マキシマイザーの閾値など)や音量などの変化パターンを入力する手法です(DAWソフトやプラグインの仕様によっては実現不可の可能性あり)。
2つ目に挙げた方法ですが、DAWソフトの仕様上、オーディオファイル1つに対してプラグインを挿入できる場合は、特定のオーディオファイルに対して個別の設定を適用したプラグインを挿入することで、特定の曲に対して特別な処置を施せます。
ただ、曲ごとのカスタムにこだわるほど、マスタリング設定共通化のメリットが薄れていくので、必要性を吟味した上で実行することをおすすめします。
2.実践例
続いて実践例として、具体的なツール操作方法を交えた手順をお伝えします。
今回の例で使用するDAWソフトとマスタリングプラグインは以下です。
- DAWソフト:ACID Pro 8
- マスタリングプラグイン:Ozone 9 Advanced
以下、1で挙げた各工程について、詳細手順をお伝えしていきます。
2-1.全対象曲オーディオファイルをDAWプロジェクトに読み込ませる
DAWソフトACID Pro 8で以下の操作を行います。
- オーディオトラックを追加
- 画面左端(トラックリスト)のオーディオトラックに対応するエリアを右クリックして表示されるメニューから「
プロパティ
」を選択 - 上記操作で表示される「
トラック プロパティ
」内フォルダマークを左クリック - 上記操作で表示されるウィンドウから、対象とする全ファイルを選択して追加(複数同時選択可能)
- 「
トラック プロパティ
」に表示されている追加ファイルのリストから、1つのファイルについて右クリック - 上記操作で表示されるメニューから「
クリップ プロパティ
」を選択 - 上記操作で表示される「
クリップ プロパティ
」画面「全般
」タブの「ACID の種類
」について「ビートマップ
」を選択 - 「
クリップ プロパティ
」画面「ストレッチ
」タブの「元のテンポ
」をプロジェクトのものと同じ値に設定 - 上記5~8を対象曲数分繰り返す
2-2.全対象曲オーディオファイル(の波形)をDAWプロジェクト1トラックに順々に並べる
DAWソフトACID Pro 8で以下の操作を行います。
- オーディオトラックのタイムライン上でドロー(クリップを生成)
- ドローしたもの(クリップ)を選択して右クリック
- 上記操作で表示される右クリックメニューから「
イベント クリップ
」にカーソルを当てる - 上記操作で左右どちらかに展開されるメニュー下側に、2-1で追加したファイルのリストが表示されるので、対象1つを選ぶ
- 上記1~4を対象曲数分繰り返して、全曲横方向に並べていく(各クリップが重ならないように)
2-3.全対象曲オーディオファイルを並べたトラック、またはマスタトラックにマスタリングプラグインを挿入
DAWソフトACID Pro 8で以下の操作を行います。
- 画面左端(トラックリスト)の挿入対象トラックに対応するエリア中、「f」文字のあるボタンを左クリック
- 上記操作で表示される「
プラグイン チューザー
」で、プラグイン「Ozone 9」をドラッグし、チェーンエリアにドロップ - チェーンエリアに「Ozone 9」が入っていることを確認してOKを押す
2-4.マスタリングプラグイン内設定
2-3で追加したOzone 9の画面を立ち上げて、マスタリング設定を行います。
色んなケースが想定されるので、詳細説明は省略しますが、マキシマイザーによる音圧アップ調整などをここで行います。
2-5.対象曲1曲ごとにレンダリング(バウンス)
DAWソフトACID Pro 8で以下の操作を行います。
- トラック上のクリップ(1曲分の波形に相当)をダブルクリックしてレンダリング範囲指定(タイムライン上部のループリージョンとして表示される)
- (レンダリング範囲を上記から変更する場合は、タイムライン上部のループリージョン長さを変更)
- ウィンドウ上部メニュー「
ファイル
」から「レンダリング
」を選択 - 表示されるウィンドウ下部の「
ループ リージョンのみレンダリング
」にチェックを入れ、ファイル名などを入力して実行 - 上記1~4を対象曲数分繰り返す
3.実践例(更なる調整)
2で示した手順で、ACID Pro 8とOzone 9を利用してのマスタリングは可能ですが、
1の最後の方でお伝えした通り、音量やマスタリング設定を
- 特定の曲だけ変えたい
- 各曲で変えたい
- 曲の途中で変えたい
といった場合には、
- オートメーションを使用する
- 特定のオーディオファイルに対してプラグインを挿入する
といった方法が有効ですので、ここではその実践例をお伝えしていきます。
3-1.オートメーションを使用する
音量やマスタリングプラグイン設定値の変化パターンを、ACID Pro 8のタイムライン上で描いていきます。
そのためには、それぞれ(音量やマスタリングプラグイン設定値)に対応するエンベロープを挿入する必要がありますが、音量とプラグイン設定値とで挿入手順が異なります。
音量の場合は以下の手順で挿入します。
- マスタトラック上のタイムラインを右クリック
- 上記操作で表示されるメニューで「
エンベロープの挿入/削除
」にカーソルを置く - 左右どちらかに展開されるメニューで「
ボリューム
」を選択すると、タイムライン上に線(エンベロープ)が表示される
プラグイン設定値の場合は以下の手順で挿入します。
- マスタリングプラグイン挿入したトラック上のタイムラインを右クリック
- 上記操作で表示されるメニューで「
FX オートメーション エンベロープ
」にカーソルを置く - 上記操作で左右どちらかに展開されるメニューで「FX オートメーション」を選択
- 上記操作で表示される「
FX オートメーション チューザー
」で対象とするパラメータを選択して(チェックを入れて)OKを押すと、タイムライン上に線(エンベロープ)が表示される
エンベロープの縦方向位置(高さ)は音量やプラグイン設定値を示し、上の位置にあるほど大きな値、下の位置にあるほど小さな値を示します。
この縦方向位置を、曲に合わせて変化させるようにエンベロープパターンを描くことで、音量やマスタリング設定を柔軟に変えることができます。
そのためには、以下の手順によって、エンベロープ上に「ポイント」を追加していく必要があります。
- 表示されているエンベロープ上、変化を生じさせたい時間(横)位置で右クリック
- 上記操作で表示されるメニューで「
ポイントを追加
」を押す(→エンベロープ上に四角マーク(ポイント)が追加される)
追加したポイントをドラッグして、任意の位置(縦、横)でドロップすると、ポイント位置を変更できます。
これだけでも大体のエンベロープパターンは描けますが、
ポイントの縦方向位置(音量や設定値に相当)をもっと細かく指定する場合には、以下操作を行います。
- ポイント上で右クリック
- 上記操作で表示されるメニューで「
設定
」を押す - 上記操作で表示される数値入力エリアで数値を入力してEnterキーを押す
3-2.特定のオーディオファイルに対してプラグインを挿入する
DAWソフトACID Pro 8で以下の操作を行います。
- タイムライン上の対象曲に対応するクリップ上「f」文字のあるボタンを左クリック
- 上記操作で表示される「
プラグイン チューザー
」で、挿入したいプラグインをドラッグし、チェーンエリアにドロップ - チェーンエリアに挿入したいプラグインが入っていることを確認してOKを押す
その後、追加したプラグインの画面を立ち上げ、個別の設定を行っていきます。
4.実践してみた感想
上記方法を数十曲分ある音源で試してみました。
プロジェクト内トラック数1、マスタトラック内プラグイン数1で済むので、プロジェクトファイル読み込みも比較的速く、その後のDAWソフト上での操作や再生も快適です。
しかし、対象曲数が多い場合は「レンダリング範囲指定→ファイル名指定保存」の繰り返し操作が特に面倒だと感じました(この点は、1曲ずつDAWプロジェクトを用意する場合も同様ですが)。
対策として、
- ファイル名はとりあえず連番で適当に付けておいて、リネーム必要であれば、後でリネームツールなどでまとめて変更する
といった方法が使えれば、少しは楽になりそうです。
5.最後に
以上、複数曲(アルバムやEPなど)のマスタリングを、簡単に、手っ取り早く行いたいときに使える方法をお伝えしてきました。
今回お伝えしてきた方法は、そこまで細かい調整が必要ない場合に有利で、
メリットとデメリットは以下の通りです。
- (メリット)1曲ずつDAWソフトを立ち上げる必要がない
- (メリット)1曲ずつプラグインを挿入する必要がない
- (デメリット)曲ごとの細かな調整には不向き
今回の記事が
- マスタリングを手早く行いたい
- 自分で聴くためだけだが、一通り音量ぐらいはちゃんと上げておきたい
- ACIDシリーズを使っている
- Ozoneシリーズを使っている
といった方のご参考になれば幸いです。