モノラル楽器音のステレオ感を高める方法

今回は、ライン録音ギターなどのモノラル楽器音のステレオ感高めたいときに使える方法をお伝えします。

なお、今回お伝えする方法は、私が使っているDAWソフト「ACID Pro 8」において、オーディオトラックを使った場合の操作に基づいて説明していきますが、

考え方の基本的な部分など、他のDAWソフトの場合などでも参考になるところがあるかと思います。

それでは以下、詳しくみていきましょう!

1.左右に分かれて同じフレーズが鳴っているようにする

(写真はイメージです)

いわゆる「チャンネルディレイ」的なアプローチです。

ギターでいうと、ステレオのミックス音源において、コード弾きやアルペジオといったバッキングギターの音は、左右どちらかに偏って鳴っていることが多いですが、リードギターの音がなく、バッキングギター一本の場合、

「そのまま左右どちらかに偏らせると、ミックス音源全体の定位が偏っていやだ・・・」

「しかし、中央に定位させるのもいやだ・・・」

というときがあるかと思います。

そうした場合、左右に分かれて同じフレーズが鳴っているように処理しておくと、定位の面で安定感が得られます。

ここで紹介する方法は、こうしたときに使うとよい方法です。

基本的な手順以下の通りです。

  1. モノラル楽器用のオーディオトラック(以下トラックAと表記)に、対象となるモノラル楽器の音を配置する
  2. センド用にバス(以下バスBと表記)を用意する
  3. トラックAとバスBとで、定位(パン)設定を変える
  4. トラックAの音をバスBにセンドする(「プリ」モード)
  5. バスBの音をわずかにディレイさせる

上記手順のうち、2~4の項目について、以下で補足していきます。

1-1.センド用にバスを用意する

ACID Pro 8の画面に表示されている上部メニューの「挿入」-「バスの挿入」を実行します。

このバスそのものは一般的なものですが、これを今回はセンド用にする、ということです。

1-2.トラックAとバスBとで、定位(パン)設定を変える

左右に分かれた音にするために必要な設定です。

定位はお好みで決めてよいですが、

設定例としては、トラックAの定位を左100%、バスBの定位を右100%、というものが挙げられます。

1-3.トラックAの音をバスBにセンドする(「プリ」モード)

ACID Pro 8の画面内「ミキシング コンソール」を縦方向に長くしていくと、

各オーディオトラックに対応するパネルの上部に、バス名と横方向スライダが現れます。

表示されているバス名のバスに対して、この横方向スライダで設定した音量分、音をセンドする(送る)、という設定が行えます。

表示されているバス名を変更すると、設定対象となるバスが変わります。

例えば、バスAが表示されている状態では、横方向スライダの音量は、バスAへのセンド用のものであり、

次にバス名表示をバスBに変更すると、横方向スライダの音量も、バスBへのセンド用のものに変わります。

また、横方向スライダの下に「プリ」あるいは「ポスト」と表示されている部分がありますが、これらの違いはそれぞれ以下の通りです。

  • プリ:各トラックで設定する音量や定位の影響を受ける前の音をセンドする
  • ポスト:各トラックで設定する音量や定位の影響を受けた後の音をセンドする

今回は、センド元とセンド先とで定位を変えますので「プリ」を選びます。

1-4.バスBの音をわずかにディレイさせる

ディレイ(遅延)は「プラグイン チューザー」を起動して、ディレイのプラグインを挿入すればよいですが、

プラグインの例としては、ACID Pro 8においてデフォルトで使える「シンプル ディレイ」が挙げられます。

シンプル ディレイ」では、ディレイ前の音と、ディレイ後の音の音量をそれぞれ決められます。

バスBではディレイ後の音だけがあればよいですから、ディレイ前の音の音量を-∞dB(オフ)、ディレイ後の音を例えば0.0dBとなるように配分しておきます。

その上で、バスBの音をわずかにディレイさせることで、トラックAとバスBを同時に鳴らしたときにステレオ感が出てきます。

適切なディレイの量は、好みと場合によりますが、例えば50ms程度にしてみると、効果が感じられることが多いかと思います。

2.左右異なるパターンも混ぜる

(写真はイメージです)

前ののアプローチは、単純に「左右に分かれて同じフレーズが鳴っているようにする」というものでしたが、

左右で少しは変化もつけてみたい」場合もあるかと思います。

左右が完全に異なるパターンの場合は、普通に左右分2トラック用意してパターン配置すればよいですが、

「少し変化をつける」(少し異なる)というレベルであれば、前のの手順をベースにして音を仕立てていくとよいでしょう。

まず以下手順を実行します。

  1. モノラル楽器用のオーディオトラック2つ(以下トラックA1、トラックA2と表記)を用意する
  2. センド用のバス(以下バスB1と表記)を用意する
  3. バスB1でディレイ設定を行う(で示した要領で)
  4. トラックA2とバスB1の定位(パン)設定を同じにする
  5. トラックA1と、トラックA2&バスB1とで定位(パン)設定を変える

続いて、左右同じパターンの区間左右異なるパターンの区間とで、それぞれ別の要領でパターン配置やトラック・バス設定を行っていきます。

2-1.左右同じパターンの区間

この区間では、トラックA1にのみパターン配置し、で示した要領で、トラックA1の音をバスB1にセンドします。

2-2.左右異なるパターンの区間

この区間では、以下の処置を行います。

  • トラックA1、トラックA2とで、異なるパターンを配置する
  • トラックA1からバスB1へのセンド音量を-∞dBとする
  • ステレオ感が乏しい場合は、左右どちらかのトラックに、ディレイを入れて調整

2つ目の操作では、トラックA1に、バスB1へのセンド量を曲中で可変にするためのエンヴェロープを挿入し、左右異なるパターンの区間でセンド音量-∞dBになるようにエンヴェロープパターンを加工します。

また、3つ目の操作についてですが、

2つのトラックの音が非常に似通っている場合、ステレオ感が乏しくなる現象が起き得ます。

この場合、どちらか片方のトラックにディレイを入れると、トラック間の波形に差がついて、結果としてステレオ感高まることが期待できます。

このときのディレイ量もケースバイケースですが、まずは10~50msの範囲から調整を試みるとよいかと思います。