EQに悩むDTMerを救う??書籍「スグに使えるEQレシピ」を読んでみた
(写真はイメージです)
今回は、EQの実例が多数紹介されている書籍「スグに使えるEQレシピ」を実際に読んでみた感想、気付いた点、さらに、内容を統計的に分析してみた結果まで、まとめてお伝えします。
この書籍はこんな方に特におススメです。
- EQについて、バンドサウンド系を中心に、実例を参考にしながら実践を積み上げていきたい
この書籍には、以下の特徴があります。
- バンドサウンド系の音源に使われる楽器を中心に、多数のEQ設定パターンの例示あり
- 各EQ設定パターンの設定根拠(狙い)について、簡単な解説あり
- 各楽器の音の特徴と周波数帯域との関係が図示されたEQ早見表の付属あり
- 付属音源(WAVファイル形式)あり(紙版の付属CD-ROM、またはWebサイトからの無料ダウンロード(会員登録やログイン不要)で入手)
それでは以下、詳しくみていきましょう!
1.実際に読んでみた感想
この本を読んで感じた良い点は以下の通りです。
- 実例を参考に実践を積み上げていきたい人に向いている
- 特にドラム関連のEQ設定例が豊富で心強い
逆に、物足りないと感じた点は以下の通りです。
- オーケストラ系音源に使われる楽器についての設定例が少ない
- 「トラック単体でEQ調整→ミキシング」としたときの効果を確認できる音源がない
1-1.良い点
最初にEQの基本的な考え方についての説明はありますが、内容の大半は個々のEQ設定例の紹介ですので、実例を参考に実践を積み上げていきたい人に向いている書籍だと思います。
各パート(楽器等)音源、ミックス音源に対するEQ設定例が紹介されているのですが、
中でもドラムについては、例えばキックだけでも15パターンも設定例があるぐらい、設定例が豊富です。
バンドサウンド系の音源では、ドラムの音色の印象が支配的なことが多いので、EQに悩むバンドサウンド系音源制作者にとっては心強く感じられることでしょう。
1-2.物足りない点1
バンドサウンド系の音源制作にはよいのですが、その分、オーケストラ系の音源制作に用いられる楽器については、あまり設定例が豊富ではありません。
サックス、トランペット、バイオリンなどがあり、全くないわけではありませんが、ドラムの設定例の豊富さに比べると、物足りなさを感じます。
1-3.物足りない点2
付属音源には、各EQ対象(楽器など)についてのEQ前の音、EQ後の音それぞれ含まれますので、それらを聴き比べることで、EQ設定パターンの効果を知ることができます。
しかし、聴感上、その違いは微小であることが多いです。
極端なEQ処理を施した「SN07_claves.wav
」などは、元音「SN00_natural.wav
」との違いがわかりやすいですが・・・
他の楽器とのミックス状態で比較すると、もう少し違いがわかりやすいのかもしれませんので、
「トラック単体でEQ調整→ミキシング」としたときの効果を確認できるミックス状態の音源が欲しいな、と思いました。
なお、ミックス状態の音源に対するEQ設定パターンの紹介と、それに対応する音源はあります。
2.気付いた点
付属音源のデータ仕様に関する説明について、実際のデータと一致しない(記載誤りと思われる)点があります。
付属音源は、紙版付録CD-ROM及び、以下のリットーミュージック公式サイト内ページからのダウンロードによって聴くことが可能です(付録CD-ROMとダウンロードファイルの内容は同一です)。
この付録CD-ROMについて、巻末には「WAVファイルは、すべて48kHz/24ビットです
」とありますが(2011年7月31日初版発行と記載された紙版で確認)、
実際には「SN08_pinstripehead.wav
」のみ48kHz/24ビット、それ以外は全て48kHz/16ビット(CD-ROMもWebダウンロードも同じ)となっています。
用途からいえば、あまり大きな問題ではないかもしれませんが、
例えば、EQ処理後の「SN08_pinstripehead.wav
」と、元音「SN00_natural.wav
」との波形差分をとってEQ処理効果を確認しよう、という場合、
波形差分をとる前に両者のデータ仕様を合わせる必要がありますので注意が必要です。
3.さらに内容分析~紹介されているEQ設定パターンの特徴~
次に、本書籍で紹介されているEQ設定パターンに含まれるEQ点数(EQポイントの数)、使用EQタイプといった点について、どのような傾向があるのか、をみていきます。
まずEQ点数についてですが、今回紹介されているEQ設定パターン1つに含まれるEQ点数は1~5の範囲に収まっています。
その中で「EQ点数が何個であるEQ設定パターンが最も多いのか」を知るために、以下のグラフを作成してみました。
- 縦軸:件数割合(全体に占める該当件数の割合(百分率))[%]
- 横軸:パターン内EQ点数
(「CY04_rusty.wav
」に対応するEQ設定パターンにおいて、表や本文説明には言及がないものの、図には存在するEQ点(HPF)も併せてカウントしてグラフに反映)
上のグラフから、EQ点数3のものが最も多く、それよりも離れたEQ設定パターンほど少なくなっていることがわかります。
続いて「どのようなEQタイプがよく使用されているのか」を知るために、以下のグラフも作成してみました。
- 縦軸:件数割合(全体に占める該当件数の割合(百分率))[%]
- 横軸:EQタイプ
(「CY04_rusty.wav
」に対応するEQ設定パターンにおいて、表や本文説明には言及がないものの、図には存在するEQ点(HPF)も併せてカウントしてグラフに反映)
上のグラフから、Peakgingタイプの使用が最も多いことがわかります。
各タイプの中でも、比較的シンプルなHPFやLPFの使用が少ないのは意外な気もしますが、
補正する部分を必要最低限にするためには、ピンポイント的に補正可能なPeakingタイプが特に有効なのだろう、と解釈すると納得できそうです。
4.最後に
まとめます。
まず、この本を読んで感じた良い点は以下の通りです。
- 実例を参考に実践を積み上げていきたい人に向いている
- 特にドラム関連のEQ設定例が豊富で心強い
逆に、物足りないと感じた点は以下の通りです。
- オーケストラ系音源に使われる楽器についての設定例が少ない
- 「トラック単体でEQ調整→ミキシング」としたときの効果を確認できる音源がない
そして、本書籍で紹介されているEQ設定パターンの傾向としては、以下がいえます。
- 1パターンあたりEQ点数3のものが最も多い
- Peakgingタイプの使用が最も多い
今回の記事が
- EQについて、バンドサウンド系を中心に、実例を参考にしながら実践を積み上げていきたい
といった方のご参考になれば幸いです。