コンプは難しい??書籍「スグに使えるコンプ・レシピ」を読んでみた

今回は、コンプ(コンプレッサー)の設定例が多数紹介されている書籍「スグに使えるコンプ・レシピ」を実際に読んでみた感想気付いた点、さらに、内容統計的分析してみた結果まで、まとめてお伝えします。

この書籍はこんな方に特におススメです。

  • コンプ(コンプレッサー)について、実例を参考にしながら実践積み上げていきたい
  • グルーヴにもこだわりたい

この書籍には、以下の特徴があります。

  • バンドサウンド、エレクトロサウンド系向け中心に設定例多数あり(※)
  • 各設定例の設定根拠(狙い)について、簡単な解説あり
  • 付属音源(WAVファイル形式)あり(紙版の付属DVD-ROM、またはWebサイトからの無料ダウンロード(会員登録やログイン不要)で入手)

(※)通常のシンプルなコンプだけでなく、サイドチェーンやM/S処理を絡めた設定例、マキシマイザー、ディエッサー、マルチバンド・コンプレッサー使用時の設定例も含む

それでは以下、詳しくみていきましょう!

1.実際に読んでみた感想

この本を読んで感じた良い点は以下の通りです。

  • 実例を参考に実践積み上げていきたい人に向いている
  • 特にドラム関連の設定例豊富で心強い

逆に、物足りないと感じたは以下の通りです。

  • 音圧をバリバリに上げた例がない

1-1.良い点

最初にコンプなどの基本的な考え方についての説明はありますが、内容の大半は、個々の具体的な設定例の紹介ですので、実例を参考に実践積み上げていきたい人に向いている書籍だと思います。

各パート(楽器等)音源、ミックス音源に対する設定例が紹介されているのですが、

中でもドラムについては、例えばキックだけでも30パターンも設定例があるぐらい、設定例豊富です。

特にバンドサウンド系の音源では、ドラムの音色の印象が支配的なことが多いので、コンプ設定に悩むバンドサウンド系音源制作者にとっては特に心強く感じられることでしょう。

2-2.物足りない点

音圧をバリバリ、具体的には、いわゆる現代の市販音源の音圧レベル(2000年代以降のメジャーJ-Popの音源などのイメージ)にまで上げた例はありません。

もっとも、そうした市販音源の音圧レベルにまで上げるには、コンプに限らず、もっと総合的なアプローチが必要なのだと思いますが、

ガッツリ音圧を上げたい人も多いであろうことを考えると、ここは物足りないと感じる点です。

2.気付いた点

コンプの使用目的(狙い)として、音量の平滑化、音色の調整がよく挙げられますが、この本では、グルーヴを変えることを狙った設定例も少なくありません。

私自身「グルーヴにこだわってコンプをいじる」ことを意識的にしてきたことがないので、この視点は特に新鮮に感じました。

DTM(楽曲音源制作)をしていて、リズム(ノリ)がしっくりこないときのアプローチとしては、

  • ヴェロシティ調整(MIDI系)
  • リズム補正(タイミング調整)
  • テイク差し替え

が挙げられますが、これらに加えて

コンプで対応する手も身につけておくと、一層柔軟に問題を解決していけそうです。

3.さらに内容分析~紹介されている設定例の特徴~

続いて、本書籍で紹介されている設定例のうち、通常コンプの設定例における以下4つのパラメータについて、どのぐらいの値設定される傾向強いのか、をみていきます。

  • ニー
  • レシオ
  • アタック(タイム)
  • リリース(タイム)

結果の概要を以下の表に示します。

通常コンプ設定例傾向分析結果
パラメータ 最小値 最大値 最頻値範囲
ニー[dB] 0 24.3 4超過8以下
レシオ 2.1 100 4超過8以下
アタック(タイム)[ms] 0.0117 161 0超過2以下
リリース(タイム)[ms] 0.945 2000 0超過20以下

(レシオは「x:1」と表せる値の「x」に対応する値を記載)

上表の中で最頻値範囲を示しましたが、この最頻値範囲は、各パラメータの値分布を示すヒストグラムを作成することで算出しました。

以下に当該のヒストグラムを示します。

ニー設定値の頻度傾向を示すヒストグラム
レシオ設定値の頻度傾向を示すヒストグラム
アタック(タイム)設定値の頻度傾向を示すヒストグラム
リリース(タイム)設定値の頻度傾向を示すヒストグラム
  • 縦軸:件数割合(全体に占める該当件数の割合(百分率))[%]
  • 横軸:(階級)(例:「40」のところは「20超過40以下」の範囲を示す)

(件数割合がごく少数となっている横軸範囲の一部を描画対象から除外)

各パラメータの適切な設定値は、対象音源や狙いによって変わりますが、

こうしてヒストグラムで分布をみてみると、設定値の相場感が大体つかめるのではないでしょうか?

4.最後に

まとめます。

まず、この本を読んで感じた良い点は以下の通りです。

  • 実例を参考に実践積み上げていきたい人に向いている
  • 特にドラム関連の設定例豊富で心強い

逆に、物足りないと感じたは以下の通りです。

  • 音圧をバリバリに上げた例がない

そして、本書籍で紹介されている通常コンプにおける設定例の傾向は以下の通りです。

通常コンプ設定例傾向分析結果
パラメータ 最小値 最大値 最頻値範囲
ニー[dB] 0 24.3 4超過8以下
レシオ 2.1 100 4超過8以下
アタック(タイム)[ms] 0.0117 161 0超過2以下
リリース(タイム)[ms] 0.945 2000 0超過20以下

今回の記事が

  • コンプ(コンプレッサー)について、実例を参考にしながら実践積み上げていきたい
  • グルーヴにもこだわりたい

といった方のご参考になれば幸いです。