【DAW関連】REAPERとACID Pro 8の操作方法比較

(写真はイメージです)

今回は、リーズナブルなDAWソフトREAPERの基本的な操作方法を、ACID Pro 8との比較という形で、まとめた結果を中心にお伝えします。

私はこれまで長い間、ACID Pro 8を使ってきましたが、

  • サイドチェーンに対応していない
  • 自動化などのカスタマイズに不向き
  • Windows10サポート終了が迫っている

ということから、REAPERへの乗り換えを検討中です。

ですが、DAWソフトの乗り換えとなると、やはり問題となるのが操作方法。

REAPERはACID Pro 8に比べて多機能であり、基本的には期待大なのですが、それでも

  • これまでと同じことができるか?
  • 使いにくくないか?

という心配があったため、今回、基本的な操作方法について調べてみることにしました。

一部不明な点があるのですが、それでも、私と同じように、REAPERの導入を検討している方には参考になるところがあるかもしれません。

それでは以下、詳しくみていきましょう!

1.プロジェクト設定

新規プロジェクトファイルを作成したときに、扱うオーディオファイルの形式などを設定するために必要な操作です。

こちらは、ACID Pro 8同様の操作でOKです。

とはいえ、ざっと見たところ、ACID Pro 8に比べて、REAPERの方が色々細かく設定できる印象です。

表にまとめると以下の通りです(下表、横にはみ出ている場合は横スクロールできます)。

ACID Pro 8とREAPER(v7.36)の操作方法比較(プロジェクト設定)
項目 ACID Pro 8 Reaper(ver7.36)
プロジェクト設定 ファイル」メニューから「プロパティ」を選択 ファイル」メニューから「プロジェクト設定」を選択

2.トラック追加

ACID Pro 8では、オーディオ、MIDI、バス、といった具合に、トラックの種別が分かれており、追加する際にも種別ごとに異なったメニュー選択が必要ですが、

REAPERではトラック自体の種別がないため、どの用途のトラックを追加する場合も同じ操作で済みます。

表にまとめると以下の通りです(下表、横にはみ出ている場合は横スクロールできます)。

ACID Pro 8とREAPER(v7.36)の操作方法比較(トラック追加)
項目 ACID Pro 8 Reaper(ver7.36)
オーディオトラックの追加 挿入」メニューから「オーディオトラック」を選択 (トラックの種別はない)「挿入」メニューから「トラック」を選択
MIDIトラックの追加 挿入」メニューから「MIDI トラック」を選択
バストラックの追加 挿入」メニューから「バス」を選択

3.タイムライン上のトラック編集(基本・共通)

ここでは、トラック種別(オーディオ、MIDI、バス)に依らない共通の基本操作について取り上げます。

表にまとめると以下の通りです(下表、横にはみ出ている場合は横スクロールできます)。

ACID Pro 8とREAPER(v7.36)の操作方法比較(トラック編集(基本・共通))
項目 ACID Pro 8 Reaper(ver7.36)
グリッド設定 オプション」メニューの「グリッド スペース」から選択 オプション」メニューの「スナップ/グリッド」から「スナップ/グリッド設定」を選択して表示される画面から設定
カーソルモード選択(変更) 編集」メニューの「編集ツール」から選択 画面左上の「Toggle Razor Editing」の有効無効切替で変更
エンベロープ挿入 挿入対象のトラックを選択した状態で、「挿入」メニューの「エンベロープ」から種類を選択して挿入
  • (音量、パンの場合)挿入対象のトラックを選択した状態で、「トラック」メニューの「エンベロープ」から「〇〇を使用」とあるものを選択して挿入
  • (fxの場合)トラックの左側パネルの「fx」ボタンを押して表示される画面から、対象とするプラグインの画面を開いたときのREAPER側領域内にある「パラメータ」の「トラックエンベロープを表示」から、対象とするものを選択して挿入

REAPERとACID Pro 8で特に大きく異なるのは以下の点です。

  • REAPERでは、エンベロープの種類によって、エンベロープの挿入方法が異なる
  • カーソルモード選択(変更)の方法

4.タイムライン上のトラック編集(オーディオ)

ACID Pro 8では、トラック上に並べるパターン要素を「クリップ」と呼んでいますが、REAPERでは「アイテム」と呼んでいます。

ここでは、オーディオ関連のトラック編集に関する操作について取り上げます。

表にまとめると以下の通りです(下表、横にはみ出ている場合は横スクロールできます)。

ACID Pro 8とREAPER(v7.36)の操作方法比較(トラック編集(オーディオ))
項目 ACID Pro 8 Reaper(ver7.36)
トラックへのオーディオファイル追加
  1. トラックの左側パネル部分を右クリックして「トラック プロパティ」を選択
  2. 開かれる「クリップ プール」上のフォルダマークを選択
  3. 開かれる画面から、追加するオーディオファイルを選択
  1. 挿入対象のトラックを選択した状態で、「挿入」メニューから「メディアファイル」を選択
  2. 開かれるウィンドウから、追加するオーディオファイルを選択
オーディオクリップの追加
  1. 編集」メニューの「編集ツール」から「ドロー」を選択
  2. 追加するトラックのタイムライン上でドラッグアンドドロップ(→オーディオのクリップが描画される)
  3. 描画されたクリップを右クリックしてメニューを表示
  4. 表示されたメニューの「イベント クリップ」から、追加したいクリップを選択
オーディオクリップの分割 分割対象の要素を選択した状態で、タイムライン上で分割したい位置にカーソルを合わせてSキー押下
オーディオクリップの削除 分割対象の要素を選択した状態で、タイムライン上で分割したい位置にカーソルを合わせてdeleteキー押下
オーディオクリップの移動 移動対象の要素を選択した状態で、対象要素をドラッグアンドドロップ
オーディオクリップの差し替え
  1. 対象トラックのタイムライン上で差し替えたいクリップを右クリックしてメニューを表示
  2. 表示されたメニューの「イベント クリップ」から、選択したいクリップを選択
  1. 対象トラックのタイムライン上で差し替えたいクリップを右クリックしてメニューを表示
  2. 表示されたメニューから「アイテムプロパティ」を選択(→「メディアアイテムプロパティ」の画面が開かれる)
  3. メディアアイテムプロパティ」の画面から「新規ファイル選択」を選択(→ファイル選択画面が開かれる)
  4. ファイル選択画面から、対象のファイルを選択し「OK」を押下
オーディオクリップのピッチ変更
  1. 対象トラックのタイムライン上で、ピッチ変更したいクリップを右クリックしてメニューを表示
  2. 表示されたメニューから「イベント プロパティ」を選択(→「イベント プロパティ」の画面が開かれる)
  3. イベント プロパティ」の画面内「ピッチ シフト」の数値を入力
  1. 対象トラックのタイムライン上で、ピッチ変更したいクリップを右クリックしてメニューを表示
  2. 表示されたメニューから「アイテムプロパティ」を選択(→「メディアアイテムプロパティ」の画面が開かれる)
  3. メディアアイテムプロパティ」の画面内「ピッチ調整」の数値を入力
オーディオクリップのベーステンポ変更(再生速度変更)
  1. 対象トラックのタイムライン上で、ベーステンポ変更(再生速度変更)したいクリップを右クリックしてメニューを表示
  2. 表示されたメニューから「クリップ プロパティ」を選択(→「クリップ プロパティ」の画面が開かれる)
  3. クリップ プロパティ」の画面内「ストレッチ」タブを選択
  4. ストレッチ」タブ内「元のテンポ」の数値を入力
  1. 対象トラックのタイムライン上で、ベーステンポ変更(再生速度変更)したいクリップを右クリックしてメニューを表示
  2. 表示されたメニューから「アイテムプロパティ」を選択(→「メディアアイテムプロパティ」の画面が開かれる)
  3. メディアアイテムプロパティ」の画面内「再生速度」の数値を入力
オーディオクリップのフェードパターン変更
  1. タイムライン上で、変更したいフェード部分を右クリック(→フェードパターン候補が表示される)
  2. 表示されるフェードパターン候補から1つを選択
オーディオ録音の開始 録音対象のトラックの左側パネル部分にある「録音アーム」ボタンを押した上で、タイムライン下にある「録音」ボタンを押す 録音対象のトラックの左側パネル部分にある「録音待機を切り替え」ボタンを押した上で、左側中央にある「録音」ボタンを押す

5.タイムライン上のトラック編集(MIDI)

オーディオ同様、MIDIにおいても、ACID Pro 8では、トラック上に並べるパターン要素を「クリップ」と呼んでいますが、REAPERでは「アイテム」と呼んでいます。

ここでは、MIDI関連のトラック編集に関する操作について取り上げます。

表にまとめると以下の通りです(下表、横にはみ出ている場合は横スクロールできます)。

ACID Pro 8とREAPER(v7.36)の操作方法比較(トラック編集(MIDI))
項目 ACID Pro 8 Reaper(ver7.36)
MIDIクリップの追加
  1. インライン MIDI 編集」が有効になっていない状態にする
  2. 追加するトラックのタイムライン上で右クリックしてメニューを表示
  3. 表示されたメニューから「空クリップを作成」を選択
  4. 編集」メニューの「編集ツール」から「ドロー」を選択
  5. 追加するトラックのタイムライン上でドラッグアンドドロップ(→MIDIの空クリップが描画される)
  6. 描画されたクリップを右クリックしてメニューを表示
  7. 表示されたメニューの「イベント クリップ」から、追加したいクリップを選択
  1. 追加対象のトラックを選択した状態で、「挿入」メニューから「新規 MIDI アイテム」を選択(→MIDIアイテムが追加される)
  2. 追加されたMIDIアイテムをダブルクリック(→「付属 MIDI エディタ」の画面が開く)
  3. 付属 MIDI エディタ」でMIDIパターンを編集(既存のアイテムを選択できる仕様になっていない)
MIDIクリップの分割 分割対象の要素を選択した状態で、タイムライン上で分割したい位置にカーソルを合わせてSキー押下
MIDIクリップの削除 分割対象の要素を選択した状態で、タイムライン上で分割したい位置にカーソルを合わせてdeleteキー押下
MIDIクリップの移動 移動対象の要素を選択した状態で、対象要素をドラッグアンドドロップ
MIDIクリップの差し替え
  1. 対象トラックのタイムライン上で、差し替えたいクリップを右クリックしてメニューを表示
  2. 表示されたメニューの「イベント クリップ」から、選択したいクリップを選択
対応する操作方法不明
MIDIクリップのピッチ変更
  1. 対象トラックのタイムライン上で、ピッチ変更したいクリップを右クリックしてメニューを表示
  2. 表示されたメニューから「イベント プロパティ」を選択(→「イベント プロパティ」の画面が開かれる)
  3. イベント プロパティ」の画面内「ピッチ シフト」の数値を入力
  1. 対象トラックのタイムライン上で、ピッチ変更したいクリップを右クリックしてメニューを表示
  2. 表示されたメニューから「アイテムプロパティ」を選択(→「メディアアイテムプロパティ」の画面が開かれる)
  3. メディアアイテムプロパティ」の画面内「ピッチ調整」の数値を入力
MIDIノートのベロシティ変更
  1. 対象のクリップを右クリックしてメニューを表示
  2. 表示されたメニューの「クリップ プロパティ」を選択(→「クリップ プロパティ」の画面が開かれる)
  3. クリップ プロパティ」の画面内で、ベロシティ変更したいノートに対応する入力欄に、ベロシティの数値を入力
  1. 対象のMIDIアイテムをダブルクリック(→「付属 MIDI エディタ」の画面が開く)
  2. 付属 MIDI エディタ」で、ベロシティ変更したいノートに対応する入力欄に、ベロシティの数値を入力
MIDIノートの長さ変更
  1. 対象のクリップを右クリックしてメニューを表示
  2. 表示されたメニューの「クリップ プロパティ」を選択(→「クリップ プロパティ」の画面が開かれる)
  3. クリップ プロパティ」の画面内で、長さ変更したいノートの端にカーソルを合わせる(→カーソルの形状が左右矢印+四角の形に変わる)
  4. この状態でドラッグアンドドロップ(左右方向)
  1. 対象のMIDIアイテムをダブルクリック(→「付属 MIDI エディタ」の画面が開く)
  2. 付属 MIDI エディタ」で、長さ変更したいノートの端にカーソルを合わせる(→カーソルの形状が左右矢印のある形に変わる)
  3. この状態でドラッグアンドドロップ(左右方向)

ここで注意点があります。

ACID Pro 8では、MIDIクリップごとコピーすると、参照コピー(コピー元のMIDIパターンを変更すると、コピー先のMIDIパターンも同様に変更される)という形になりますが、

REAPERでは、同じようにコピー操作しても、参照コピーとはならず、別モノとしてコピーされます(コピー元だけMIDIパターン変更しても、コピー先には変更が反映されない)。

参照コピーの方法は現時点不明です。

また、ACID Pro 8で普通にできていたMIDIクリップの差し替えに対応する操作も、現時点不明です。

6.トラック設定

ここでは、プラグイン追加やルーティング関連設定などの、トラック設定に関する操作について取り上げます。

表にまとめると以下の通りです(下表、横にはみ出ている場合は横スクロールできます)。

ACID Pro 8とREAPER(v7.36)の操作方法比較(トラック設定)
項目 ACID Pro 8 Reaper(ver7.36)
VSTプラグインの追加 トラックの「fx」ボタンを押すことで表示される画面上で、追加するVSTプラグインを選択
ソフトシンセの追加 プラグイン マネージャ」から、追加するソフトシンセを選択
  • (既存トラックへの追加)上記「VSTプラグインの追加」と同じ
  • (新規トラックへの追加)「挿入」メニューから「ソフトシンセを新規トラックに追加」を選択
センド量の変更
  1. ミキシングコンソール」(縦方向に長くしておく)で表示されているバス名を、センド量を調整したいバスのものに変更
  2. 表示したセンド対象バス名に対応する横方向スライダでセンド量を設定
  1. 表示」メニューの一覧で「ミキサー」にチェックを入れる
  2. 表示された「ミキサー」画面で「fx」の下にあるカラフルな縞模様のボタンを押す(→「ルーティング」画面が表示される)
  3. ルーティング」画面上で、各センド先に対して設定を行う(左側に音量バー、右側に定位バーがあり、音量バーの上側にそれぞれに対応する数値/文字入力バーがある(バーと入力内容とは連動))
プリ/ポストフェーダの変更 上記横方向スライダの下にある選択欄から、プリ/ポストのどちらかを選択 上記「ルーティング」画面上で、各センド先に対して設定を行う(定位バーの上にある選択欄からプルダウンメニューを開いて選択)
出力先の変更 ミキシングコンソール」にある「出力」選択欄から出力先を選択 上記「ルーティング」画面上で、上部にある「Master send」のチェックを外し、センド先に対して出力する設定を行う(上記センドの設定と同様)

ACID Pro 8に比べて、統一性柔軟性のある仕様操作になっています。

具体的には、REAPERでは、ACID Pro 8とは異なり、

  • トラックの出力先の設定と、センドの設定が同じ画面、要領で可能
  • ソフトシンセ(VSTi)とVSTプラグインの挿入が同じ画面、要領で可能
  • ソフトシンセ(VSTi)の使用は、MIDIアイテムのあるトラックにソフトシンセ(VSTi)を挿入することで可能

となっているのが特に大きな特徴です。

ACID Pro 8では、

  • トラックの出力先の設定と、センドの設定が異なる概念で取り扱われ、設定方法も異なる
  • ソフトシンセ(VSTi)の使用は、ソフトシンセ(VSTi)を挿入したときに作成されるソフトシンセ(VSTi)トラックを、MIDIトラック側から参照するように対応付けることで可能

となっており、REAPERに比べて煩雑な印象です。

また、センドや出力先について、REAPERでは特に制約がありませんが、

ACID Pro 8では、以下の表に示す通り、かなり制約が多い仕様になっています。

ACID Pro 8におけるルーティングパターンの制約(マスタ以外)
送信先
送信元 オーディオ ソフトシンセ バス
オーディオ × ×
ソフトシンセ × ×
バス × ×

(表中の〇、△、×の意味は以下の通り)

  • 〇:センドも出力もOK
  • △:出力のみOK
  • ×:センドも出力も不可

7.最後に

以上、REAPERの操作方法を、ACID Pro 8との比較という形で、まとめた結果を中心にお伝えしてきました。

今回の調査範囲(対象とした操作項目)において、調査結果について総評すると以下の通りです。

  • 概ね、REAPERの方が多機能であり、ACID Pro 8で可能なことはREAPERでもほとんど可能
  • ただし、ACID Pro 8で可能な「MIDIパターンの参照コピー」が、REAPERでも可能かは現時点不明

今回の記事が

  • ACID ProからREAPERに乗り換えたい
  • REAPERの操作方法を知りたい

といった方のご参考になれば幸いです。