DTM、過去の制作データを管理して保存しておくために
今回は、DAWに依存しない制作データを保存する方法の例を紹介します。
特に以下のような方におススメの内容です。
- 過去曲を手直しできるようにしておきたい
- DAWの乗り換えを考えている
- 現在使っているDAWが使えなくなることに不安がある
1.DAWに依存しない制作データ保存が必要な理由
「過去曲を手直ししたい」と思ったことはないでしょうか?
私は何度もありますし、今でも色々リメイクしたいと思っています。
今後もそうした気持ちは出てくるでしょう。
リメイク版制作や、過去制作音源の再制作をする際には、制作データへのアクセスが必要です。
特に事情の変化などがなければ、基本的にはDAWプロジェクトファイルと関連ファイル、それに環境(プラグインが使える状態など)を保存しておけば、いつでもリメイク着手(作業再開)できます。
しかし、制作に使用したDAWを使わなくなる場合を想定する必要が出てくるかもしれません。
例えば以下の場合です。
- DAWを乗り換えたい
- 新しいPC環境(OS更新などによる)では従来のDAWが非対応で使えない
このような場合は、DAWに依存せずにアクセス可能な制作データが必要です。
というわけで、今回紹介するような作業が必要になってきます。
2.データの保存レベル
理想的には、プラグイン設定やテイク選定などからさかのぼってやり直せるレベルを目指したいですが、実際にはなかなかハードルが高いです。
音声データのみならず、各プラグインの設定や、トラックルーティングといった情報まで、何らかの形で記録しておく必要がありますから・・・
そこで、ある程度目的に応じて割り切って対応することを考えます。
目的の例としては以下が挙げられます。
- プロジェクトファイルでレンダリング(バウンス)したときの結果を再現できる状態を作る
- 上記再現は不可能でも、リメイク版制作可能なレベルの状態を作る
こうした目的のためには、以下のような作業を行っておくとよいでしょう。
- 各トラックレンダリング(各トラックのオーディオファイル化)
- MIDIエクスポート
各トラックのオーディオファイルが残っているだけでも十分なことも多いですが、
MIDI編集からやり直したいこともあるかもしれませんので、MIDIエクスポートも行っておくと安心です。
これらの作業の詳細な手順は、DAWソフトによって異なってきますが、
以下、私が長らく使用しているDAWソフトACID Pro 8の場合について、説明していきます。
3.各トラックレンダリング
ACID Pro 8の場合、連続して複数トラックのレンダリングを行える機能があります。
ただし、この機能でレンダリングできるトラックは以下のみです。バストラックについては4で後述する通り、1つずつ手動でレンダリングする必要があります。
- オーディオトラック
- (ソフトシンセに紐づけられた)MIDIトラック
なお、この機能の実行前に以下の処置が必要です。
- 何かがセンドされているオーディオバスはミュートしておく(※1)
- マスタートラックに挿入されているもの(fxやエンベロープ)で、各トラックの音に影響させたくないものがあれば外しておく(※2)
操作手順は次の通りです。
- 「
ファイル
」メニューから「レンダリング
」を選択 - その後に表示されるエクスプローラーウィンドウの下部にある「
各トラックを別ファイルに保存
」にチェックを入れる - その他項目を確認・設定した上で「
保存
」ボタンを押下
(補足)実行前に上記処置が必要な理由
- (※1)そのままだと、各トラックレンダリング時でも、センド先のオーディオバスは常に有効になり、センドしている音が各トラックに混じってしまうため
- (※2)マスタートラックに挿入されているfxには、単体で鳴らすときには不適当なもの(コンプレッサやマキシマイザーなど)が存在する場合があるため
- (※2)エンベロープも、例えばフェードアウト用にパターン設定している場合はそのまま有効になるが、これが不適当だと判断される場合があるため
4.オーディオバストラックを1つずつ手動レンダリング
オーディオバストラックを1つずつS(ソロ)に設定して手動レンダリングしていくだけですが、
実行前に以下の処置が必要です。
- マスタートラックに挿入されているもの(fxやエンベロープ)で、各トラックの音に影響させたくないものがあれば外しておく
- 対象となるトラックのみS(ソロ)にする(意図せずS(ソロ)になっているトラックがないか確認)
操作手順は次の通りです。
- 「
ファイル
」メニューから「レンダリング
」を選択 - その後に表示されるエクスプローラーウィンドウで、各種項目について確認・設定した上で「
保存
」ボタンを押下
5.MIDIエクスポート
ACID Pro 8の場合、複数のMIDIトラックを1つのMIDIファイルとして出力する機能があります。
ただし、この機能の実行前に以下の処置が必要です。
- エクスポート対象にしたいMIDIトラックのうち、フリーズしているものはフリーズ解除しておく(※3)
- エクスポート対象にしたいMIDIトラックのうち、ミュートになっているものはミュート解除しておく(※3)
- MIDI以外の別トラックのS(ソロ)選択は解除しておく(※4)
操作手順は次の通りです。
- 「
ファイル
」メニューから「MIDIのエクスポート
」を選択 - その後に表示されるエクスプローラーウィンドウで、各種項目について確認・設定した上で「
保存
」ボタンを押下
(補足)実行前に上記処置が必要な理由
- (※3)フリーズ及びミュート設定になっているものは正常にMIDIエクスポートできない
- (※4)MIDI以外の別トラックがS(ソロ)になっている場合も正常にMIDIエクスポートできない
6.最後に
以上、DAWに依存しない制作データを保存する方法の例についてお伝えしてきました。
以下、要点をまとめます。
まず、今回お伝えした形でのデータ保存が必要となる背景、理由は、以下の通りです。
- リメイク版制作などのために、過去制作データの保存が必要
- 現在使っているDAWソフトが、今後使えなくなる場合がある
- DAWソフトに依存せずにアクセス可能な形でのデータ保存が必要
データ保存といっても、すべて保存するのは難しいので、リメイク版制作可能な状態を目指して、
- 各トラックのオーディオファイル
- MIDIファイル
ぐらいを出力しておくとよいでしょう、という話でした。
今回の記事が、
- 過去曲を手直しできるようにしておきたい
- DAWの乗り換えを考えている
- 現在使っているDAWが使えなくなることに不安がある
といった方のご参考になれば幸いです。