市販音源のミックスにおける帯域配分を推し量る

(写真はイメージです)

ミックスにおける帯域の問題について。

「市販音源のミックスの特徴を調べよう」と思って、ミックス状態の市販音源をスペクトラムアナライザーなどで確認していても、ピンとこないことが多いかと思います。

やはり、楽曲音源全体の中で、

  • 各トラック(楽器)は、どのような帯域バランスとなっているのか?

といったような「帯域配分」に着目した確認が必要ではないでしょうか?

本記事では、各トラックの帯域比率を定量的にみることで、市販音源における「帯域配分」の様子を探っていこうと思います。

簡単な結論を知りたい方は、以下の目次から「3.最後に」に飛んでいただければと思います。

1.分析方法

一般的なスペクトラムアナライザーでは、楽曲全体の周波数バランスは確認できます。

しかし、それだけでは「どのトラック(楽器)がどの帯域をメインにしているのか」などは分かりません。

そこで本分析では、ミックス状態の音源からドラム、ベース、ボーカル、ギター(またはその他)を取り出し、以下の観点で定量化します。

  • 各トラックの帯域比率:1つのトラック内で、どの帯域がどの程度の割合を占めているか

今回対象とする市販音源ですが、ギターバンドサウンドにボーカルが乗るタイプのJ-Pop/Rockの以下4つの楽曲音源としました。

  • MOSHIMO「触らぬキミに祟りなし」(2017年リリース)
  • NUMBER GIRL「BRUTAL NUMBER GIRL」(2014年リリースのリマスター版)
  • SHERBETS「HIGH SCHOOL」(1999年リリース)
  • Hysteric Blue「ふたりぼっち」(1999年リリース)

これらの各音源は、特に極端に異なるものを選んだというわけでもありませんが、

各音源の特徴を簡単に述べるなら、

1曲目は現代的ハイファイサウンド、2、3曲目はノイジーなローファイサウンド、4曲目はクリアで少し軽めの90年代J-Popサウンド、といったところでしょう。

帯域については、iZotope社のTonal Balance Control 2のBraodモードを用いることで、以下4帯域のバランスを確認しました。

  • Low:20Hz - 250Hz
  • Low-Mid:250Hz - 2kHz
  • High-Mid:2kHz - 8kHz
  • High:8kHz - 20kHz

2.分析結果

結果は以下のように処理し、各トラックの帯域比率を算出しました。

  1. 各市販音源の、各トラックにおけるTonal Balance Control 2の画面から、各帯域の成分量をピクセル単位で読み取る
  2. 読み取った成分量から、各トラックの帯域比率を算出

なお、各音源の「ギター(またはその他)」についてですが、

Hysteric Blue「ふたりぼっち」は、ギター以外にストリングスなども目立つことから、ギター単独ではなく、ストリングスも含めた「その他」として分析、他3曲についてはギター単独として分析しました。

市販音源ごとのグラフを以下に示します。

MOSHIMO「触らぬキミに祟りなし」の各トラック帯域比率を示す棒グラフNUMBER GIRL「BRUTAL NUMBER GIRL」の各トラック帯域比率を示す棒グラフ
SHERBETS「HIGH SCHOOL」の各トラック帯域比率を示す棒グラフHysteric Blue「ふたりぼっち」の各トラック帯域比率を示す棒グラフ

(上図、MOSHIMO「触らぬキミに祟りなし」(左上)、NUMBER GIRL「BRUTAL NUMBER GIRL」(右上)、SHERBETS「HIGH SCHOOL」(左下)、Hysteric Blue「ふたりぼっち」(右下))

棒グラフ中の色と帯域の対応は以下の通りです。

  • 青色:Low
  • 橙色:Low-Mid
  • 灰色:High-Mid
  • 黄色:High

各トラック(楽器)における帯域配分傾向としては、以下のことがいえます。

  • ドラム(Drum):比較的全帯域に配分されているが、MOSHIMO「触らぬキミに祟りなし」ではLowの成分がやや大きく、Low-Midの成分がやや小さい(聴感上も重心低めの印象)
  • ベース(Bass):どの音源でもLowの成分が非常に大きく、High-Mid以上の高域の成分が非常に小さい
  • ボーカル(Vocal):どの音源でもLowの成分が非常に小さく、Low-Mid、High-Midがメインとなっている
  • ギター(Guitar)(またはその他(Other)):ボーカルと似た傾向であるが、ボーカルに比べるとLowの成分が大きく、Highの成分が小さい

3.最後に

以上、各帯域のトラック比率を定量的にみることで、市販音源における「帯域配分」の様子を探ってきました。

各トラック(楽器)の帯域配分傾向は、以下のようにまとめられます。

  • ドラム(Drum):比較的全帯域に配分されている
  • ベース(Bass):Lowの成分が非常に大きく、High-Mid以上の高域の成分が非常に小さい
  • ボーカル(Vocal):Lowの成分が非常に小さく、Low-Mid、High-Midがメインとなっている
  • ギター(Guitar)(またはその他(Other)):ボーカルと似たような傾向(Low-Mid、High-Midがメイン)だが、ボーカルに比べるとLowの成分が大きく、Highの成分が小さい

今回の記事が、理想のミックス&帯域配分を考えるヒントになれば幸いです。