Fenderストラトのトレモロ周りの調整、メンテで注意したいこと
前回、私が使用しているFender USAのジェフベックモデルストラトキャスターについて紹介しました。
今回はそれに関連して、Fenderストラトのトレモロ周りの調整、メンテナンスで注意したい点をまとめてお伝えします。
1.トレモロアームでチューニングが狂う原因と対策
簡単にいえば、主に以下2つの現象がともに起こることが原因です。
①トレモロアーム使用時にナットやブリッジ部分で弦が移動する
②ナットやブリッジ部分の摩擦抵抗により弦の移動が妨げられる
トレモロアームで音程を変化させる場合、弦が一時的に伸び縮みします。
このとき、ナットやブリッジ部分に乗っている弦が移動します。
トレモロアームを元に戻したとき、弦が元の位置に戻ればよいのですが、摩擦によって完全には元の位置には戻りません。
その結果、チューニングが狂ってしまうことになります。
この問題に対するアプローチとしては、大きく分けて次の2種類があります。
(対策1)ナットやブリッジで弦を固定する
これは上で挙げた原因①に着目したアプローチです。
そもそも弦がナットやブリッジ部分で移動しなければチューニング狂いの問題も発生しません。
いわゆるフロイドローズ型と呼ばれるタイプのギターがこちらに該当します。
ギターの音程に寄与するのはナット-ブリッジ間の弦張力なので、ナット-ブリッジ部分で弦を固定したまま、アームで音程を変化させることができます。
Fender純正のギターでも、このフロイドローズ型を採用した「Blacktop Stratocaster HH Floyd Rose」というモデルがあります(入手は困難そうですが)。
(対策2)ナットやブリッジ部分の摩擦を減らす
上で挙げた原因②に着目したアプローチです。
ナットやブリッジ部分で弦が移動しても、摩擦が小さければ弦がほぼ同じ位置に戻ることになるので、チューニング狂いの程度は抑えられます。
このアプローチを採用した部品には、ローラーナットやローラーサドルがあります。
通常、ナットやサドルは弦を乗せるだけですが、ローラーナットやローラーサドルには、弦を積極的に動かすようにボールが配置されています。
その結果、通常のナットやサドルに比べて摩擦が少なくなります。
Fender USAのジェフベックモデルストラトでは、ローラーナットが採用されています。
2.ローラーナットでも油断は禁物
1の(対策2)でみたように、ローラーナットは弦の摩擦が少ないという特徴がありますが、ローラーナットでも、当然ながら弦の通すためのスペース部分にホコリがたまって、すべりが悪くなる(摩擦が増える)ということが起きます。
そのため、ローラーナットも通常のナットと同様、定期的に掃除する必要があります。
ローラーナットの掃除方法としては、主に以下2つがあります。
・分解洗浄を行う
・エアーダスターでホコリなどを吹き飛ばす
分解洗浄は、ローラーナットの部品を分解して徹底的に洗浄するというもので、効果は高いのですが、部品を分解するという点、紛失するリスクがある点を踏まえると、個人でやるのはハードルが高いです。
従って、楽器屋や工房に依頼した方が無難でしょう。
対して、エアーダスターを用いる方法は、完全にホコリを飛ばし切ることは難しいものの、分解洗浄に比べてリスクが低いので、日常的に個人が行う作業としては適しています。
従って、普段はエアーダスターでメンテナンスしておき、トレモロアーム時のチューニング狂いが気になり出したら、楽器屋や工房にみてもらう、というスタンスがよろしいかと思います。
3.異なる仕様の弦に交換すると弦高調整必要
トレモロアーム付のギターは、弦の張力とギターボディー内部にあるスプリングの張力とのバランスで弦高が変わります。
従って、弦を異なるゲージや、同じゲージでも異なる材質、メーカーのものに交換する場合は、トレモロブリッジの位置(浮き具合)が変わる可能性があります。
そのため、異なる仕様の弦に交換する場合は、一般的に弦高調整が必要になります。
私も今年、これまで使用してきたピュアニッケル製の「Fender 150R」からステンレス製の「Fender 350R」に変えましたが(ゲージは同じ)、トレモロブリッジの浮き具合が変わりました。
ピュアニッケル製の弦を張っていたときには、トレモロブリッジがしっかり浮いていましたが、ステンレス製の弦に変えると、ブリッジがボディにべったりとくっつくようになり、弦高も低くなったのです。
ブリッジがボディにべったりとくっつくと、アームを引っ張って音程を上げる、アームアップの演奏ができなくなるばかりか、トレモロアーム使用後のチューニングが戻りにくくなるというデメリットがあります。
チューニングが戻りにくくなる原因はよくわかりませんが、ブリッジがボディから浮いている方が、ブリッジの動きの自由度が高い分、弦の状態が元に戻りやすいのかもしれません。
結局、再度弦高を調整して元の浮き具合を取り戻すことができました(このあたりの作業は難しいので楽器屋に依頼)。
ちなみに、Fender標準のセットアップにおける浮き具合というのは、「トレモロアームの棒を後ろに回したときに、ボディーとアームが平行になるぐらい」なのだそうです(調整を依頼した楽器屋の店員さんからの情報)。
私は現在、このFender標準のセットアップの状態で弾き続けていますが、弦高は低すぎず高すぎず、トレモロアーム使用後のチューニング狂いも少なく、丁度良い弾き心地です。
4.最後に
演奏の幅が広がって楽しい反面、チューニングの問題などで悩みも増えるトレモロアーム。
調整などを全部自分でやろうとすると、膨大な時間を費やした割に、上手く調整できなかった、という結果になりかねないので、調整作業自体が好きな人、興味がある人以外は、積極的に楽器店(プレミアムギターズ(イケベ楽器店)など)や工房を頼ることをおすすめします。
イケベ楽器店でのリペアについてご興味があれば、以下記事もご参考にしていただければ、と思います。