DTM用DAWソフトACID Pro 8でシャッフル(スウィング)系のハネたフレーズを打ち込む方法
今回はACID Pro 8でシャッフル(スウィング)系ビートのMIDIフレーズを打ち込む(入力する)方法についてお伝えします。
シャッフル(スウィング)系ビートの曲とは、例えば次のような曲です。
この曲は、古きよきジャズ~ブルース系のピアノを意識して作ったものですが、タイトルに「Haneru」とあるように、少し「ハネた」独特のリズムになっています。
しかし、独特であるがゆえに、DTMでこの手の曲を作ろうとすると、何だか設定などが面倒そう・・・
そんな風にハードルの高さを感じてしまう方も少なくないのではないでしょうか?
しかし、幸いなことに、DTM用DAWソフトACID Pro 8には、半ば自動的にリズムを整えてくれるMIDIフィルタ機能(※)が備わっています。
(※)MIDIフィルタ(機能):「MIDI 入力フィルタ」と「MIDI プロセスとフィルタ」を総称した筆者独自の用語
このMIDIフィルタを使用すれば、大まかには次のような手順で、スムーズにシャッフル(スウィング)系ビートのMIDIフレーズを入力することができます。
- 一旦、MIDIフレーズを3連符基準で整える
- MIDIフィルタでスウィングの強弱を調整する
一旦、3連符基準のフレーズを完成させてから、スウィングの強弱(リズムのハネ具合)を調整するという手順なので、譜面で表現しづらい微妙なリズムを作る場合でも、混乱なく作業を進めていくことができます。
それでは以下、詳しくみていきましょう!
1.スウィングの考え方とACID Pro 8における取り扱い
具体的な手順の説明に入る前に、ACID Pro 8でスウィングを取り扱うにあたって、その基本的な考え方について触れておきます。
1-1.MIDI打ち込みにおけるスウィングの考え方
スウィングのとらえ方には、色々奥深いものがありますが、少なくともMIDI打ち込みにおいては、3連符を基準に考えるとよいでしょう。
例えば、8分音符をスウィングさせる場合。
スウィングなしの場合には、4分音符1つ分の長さを8分音符2つで1:1に割るところを、8分3連符単位で2:1に割れば「ハネた」リズムになります。
このような考えで打ち込んでいけば、一応シャッフル(スウィング)系のパターンは完成します。
1-2.スウィングの強弱(ハネ具合)の調整
しかし、世の中のシャッフル(スウィング)系のパターンが全てこの2:1の比率で演奏されているわけではありません。
3:2ぐらいにして少しだけハネる、あるいは3:1ぐらいにして強めにハネるといった具合に、シャッフル(スウィング)系のリズム解釈には幅があります。
このような微妙なリズムは、譜面で表しにくいものですが、ACID Pro 8では、こうした微妙なリズム調整も可能なのです!
どうやって??
MIDIフィルタの中の「クオンタイズ」機能を使えばOKです!
この「クオンタイズ」機能によって、打ち込む音符の位置や長さを整えることができます。
もう少し詳しく説明してみましょう。
「クオンタイズ」機能を使用したスウィング調整には「スウィング」と「強さ」という2つのパラメータが関わってきます。
3連符基準(2:1)で打ち込んだパターンに対して、これらのパラメータは次のように作用します。
- 「スウィング」:3連符基準のスウィング(2:1)のパターンを100%、スウィングなしパターンを0%として、スウィングの強さが調整される
- 「強さ」:クオンタイズの厳密性を調整するもので、例えば50%にすると、本来の調整幅の半分しか調整されない(通常は100%でOK)
こうした作用によって、スウィングの強弱(リズムのハネ具合)の微妙な調整が可能というわけです・・・
と、前置きはこのぐらいにして、次の2、3章で具体的な手順を説明していきます。
実際の打ち込み作業においては、初めからスウィング前提で打ち込む場合と、スウィングなしのストレートなリズムですでに打ち込んであるフレーズをスウィングさせる場合の、2つのシチュエーションがあるかと思います。
ですので、以下ではそれぞれの場合に分けて説明していきます。
2.初めからスウィング前提で打ち込む方法
初めからシャッフル(スウィング)系ビートのフレーズを打ち込む場合の手順は次の通りです。
- 3連符グリッドを効かせて打ち込む
- MIDIフィルタの「スウィング」を調整する
2-1.3連符グリッドを効かせて打ち込む
リズム補正(クオンタイズ)する前提の表現ですが、MIDIキーボードを利用して打ち込む場合、リズム補正(クオンタイズ)する場合と、そうでない場合とがあるかと思います。
リズム補正しない場合は、「MIDI 入力フィルタ」の「クオンタイズ」をオフにして、スウィングさせた演奏をそのまま録音すればOKです。
リズム補正を行う場合、「MIDI 入力フィルタ」の「クオンタイズ」をオンにしますが、その補正単位(「クオンタイズ グリッド」)には3連符を選択しておく必要があります。
例えば8分3連符を選択する場合、「クオンタイズ グリッド」のベース音符(音符マーク)に8分音符を選択、その下の「連符」にチェックを入れ、「3/2」となるように右側に数字を入力します。
MIDIキーボードを使用しない場合は、グリッド機能を活用して、3連符基準のパターンを直接打ち込んでいきます。
「MIDI入力 フィルタ」など、MIDI打ち込みに関する事項については、以下記事もご参考にしてください。
2-2.MIDIフィルタの「スウィング」を調整する
2-1で打ち込んだリズムのままにするのであれば、この調整は不要ですが、リズムのハネ具合を調整したい場合は、次の手順で「スウィング」の値を調整します。
- 調整したい部分の音程バー、あるいはMIDIクリップを選択した状態で右クリックして「MIDI プロセスとフィルタ」を選択
- 「クオンタイズ グリッド」に連符のベース音符(例:8分3連符基準なら8分音符)を選択
- 「連符」、「オフセット」のチェックを外す
- 「オプション」の「強さ」を100%とし、「スウィング」の値を調整する
「スウィング」100%が、3連符基準(2:1)のリズムに相当し、これよりも小さい値に設定すると弱く、大きい値にすると強くハネます。
なお、2-1でリズム補正なしのフレーズを打ち込んだ場合は、この方法で意図したクオンタイズ処理がされない可能性もあります。
そのような場合は、リズムを確認しながら逐次修正していきます。
3.スウィングなしのパターンをスウィングさせる方法
スウィングなしのストレートなリズムのMIDIフレーズを、後からスウィングさせる場合の手順は次の通りです。
- 3連符でクオンタイズする
- MIDIフィルタの「スウィング」を調整する
こちらの場合でもやはり基準は3連符です。
3-1.3連符でクオンタイズする
1つ目の「3連符でクオンタイズする」手順は次の通りです。
- スウィングさせたい部分の音程バー、あるいはMIDIクリップを選択した状態で右クリックして「MIDI プロセスとフィルタ」を選択
- 「クオンタイズ グリッド」に連符ベースの音符(8分3連符基準なら8分音符)を選択
- その下の「連符」にチェックを入れ、「3/2」となるように右側に数字を入力
- 「オフセット」のチェックを外す
- 「オプション」の「強さ」を100%、「スウィング」を0%として「適用」を押す
これでスウィング調整の基準となる、スウィング100%のパターンが完成します。
3-2.MIDIフィルタの「スウィング」を調整する
これについては、2-2で説明した通りです。
1つ目の操作によって「スウィング」100%に相当するパターンが打ち込めていますので、そこを基準に「スウィング」の値を調整していきます。
4.最後に
以上、ACID Pro 8でシャッフル(スウィング)系ビートのMIDIフレーズを入力する方法についてお伝えしてきました。
初めからスウィング前提で打ち込む場合と、スウィングなし(ストレート)のパターンをスウィングさせる場合、両方ありますが、いずれも次の要領で進めることに変わりはありません。
- 一旦、MIDIフレーズを3連符基準で整える
- MIDIフィルタでスウィングの強弱を調整する
一旦、3連符基準のフレーズを完成させてから、スウィングの強弱(リズムのハネ具合)を調整するという手順なので、譜面で表現しづらい微妙なリズムを作る場合でも、混乱なく作業を進めていくことができます。
「ハネたリズムの曲をDTMで作りたいけど難しそう」と思っているDTMerの方々も、この手順を参考に、一度挑戦されてみてはいかがでしょうか?
かくいう私もこの曲以来、「ハネ」系の曲を作ってはいませんが、久しぶりに作ってみようかな・・・