ISOVOX 2とウタエット EX+の防音効果を簡易に比較実測してみた結果
(写真はイメージです)
今回は、パーソナル防音ブース(ボーカルブース)として使えるISOVOX 2と、防音マスク系グッズとして使えるウタエット EX+の防音効果を簡易に比較実測してみた結果についてお伝えします。
どちらも自宅で歌いたい場合に役立つグッズですが、
ISOVOX 2は言ってみれば「顔だけ防音室」といったタイプ、
これに対し、ウタエット EX+は「口だけ防音」できるタイプのグッズです。
自然に歌えて録音にも使える点でISOVOX 2はかなり魅力的ですが、価格は高めであり、設置スペースも馬鹿になりません。
ですので、ISOVOX 2の導入を検討しようとしても、
- (もっと手軽に導入可能な)防音マスク系グッズと比べて防音効果がどうなのか?
といったところが気になるものかと思います。
さて、最初に今回の検証結果から得た結論をざっとお伝えしておきます。
- 防音効果はほとんどの場合でウタエット EX+の方が高い
今回はISOVOX 2とウタエット EX+でそれぞれ別に発声&録音せざるを得なかったため、
測定ばらつき(極力揃えたつもりですが)の影響を含む結果にはなっていますが、
一つの目安として参考になるものではないか、と思います。
構造の違いを考えても、隙間の多いISOVOX 2より、
口周りを直接覆えて、隙間を少なくできるウタエットの方が防音効果自体は期待できるといえそうです。
ですので、
- 防音重視:ウタエット
- 歌唱&録音環境重視:ISOVOX 2
といったように、用途に応じて選ぶ(使い分ける)のがよいかと思います。
それでは以下、詳しくみていきましょう!
1.検証条件
(写真はイメージです)
今回の検証では、以下を調べることにしました。
- ISOVOX 2内外での音量差(ISOVOX 2の防音効果)
- ISOVOX 2使用時-ウタエット使用時音量差(ISOVOX 2-ウタエット間の防音効果差)
1つ目の項目は、既にSoundCloudで公開されているテスト音源(私のものではありません)に基づく推定検証(以下記事)でおおよそ把握しているつもりですが、
自分の環境&声でも確かめておこうと思い、今回の調査項目に加えました。
1つ目の項目「ISOVOX 2内外での音量差」を測定するためには、ISOVOX 2発声時の声をISOVOX 2内外で録音する必要があり、
2つ目の項目「ISOVOX 2使用時-ウタエット使用時音量差」を測定するためには、ウタエット使用時の声を録音する必要があります。
以上の事情、及び、同じ録音機材が1つしかないことから、以下の通り、グッズと録音場所の違いにより3回発声&録音することにしました。
- ①ISOVOX 2使用/ISOVOX 2内録音
- ②ISOVOX 2使用/ISOVOX 2外録音
- ③ウタエット EX+使用/ISOVOX 2外録音(②と同じ場所で録音)
上記②-③で使用グッズが異なりますが、口位置(発声位置)-録音機材間の距離はほぼ同じに揃えました。
上記②における口位置、録音機材間の位置関係は以下の通りです。
また、録音機材と声条件(音程&発声条件)はそれぞれ以下の通りです。
- 録音機材:ICレコーダーICD-SX67(録音レベル10,マニュアルモード)
- 声条件:下の表参照(これらをISOVOX 2、ウタエット EX+それぞれ使用して発声)
発声種別 | 音程 | 発音 |
---|---|---|
地声 | B2 | ア |
A3 | ||
E4 | ||
F4 | ア | |
イ | ||
ウ | ||
エ | ||
オ | ||
裏声1(※1) | E4 | ア |
A4 | ||
B4 | ||
C#5 | ||
裏声2(※2) | E4 | ア |
A4 | ||
B4 | ||
C#5 |
- (※1)裏声1:アンザッツ5的な音色(割と鋭めの裏声)狙い
- (※2)裏声2:アンザッツ6的な音色(割と太めの裏声)狙い
以上の条件&内容の測定を行った結果を用いて、以下の要領で防音効果を見積もりました。
- 各条件の録音音源から発声部分の平均音量を算出する
- ISOVOX 2使用(ISOVOX 2外録音)時、ウタエット EX+使用(ISOVOX 2外録音)時、それぞれの平均音量に対して、ISOVOX 2使用(ISOVOX 2内録音)時の平均音量を差し引いた値(音量)を算出する(声条件ごとに)
- 上記差し引いた値(平均音量差)を、ISOVOX 2、ウタエット EX+の防音効果とみなす
なお、今回の検証については、その手法上、以下のような限界があると考えられます(1つ目については極力ばらつきのないように揃えたつもりですが)。
- 同時測定ではなく、繰り返し発声による測定のため、発声ばらつきの影響を受ける
- 上表の通り、音程と発音(母音)パターンなどを決めて測定したが、それ以外の要素(声質など)によっては異なる結果になり得る
2.検証結果
今回の結果から、大まかには以下の結論が得られました。
- 防音効果はほとんどの場合でウタエット EX+の方が高い(特に高音地声(張り上げ)で顕著に表れることがある)
続いて、声条件ごとにもう少し詳しくみていきたいと思います。
1で示した通り、今回の声条件は様々ですが、以下4つに分けてグラフ化し、考察を加えていきます。
- 地声"ア"(B2/A3/E4)
- 地声F4(ア/イ/ウ/エ/オ)
- 裏声1"ア"(E4/A4/B4/C#5)
- 裏声2"ア"(E4/A4/B4/C#5)
2-1.平均音量差比較(地声"ア")
以下に平均音量差比較結果のグラフを示します(ISOVOX 2内録音時の平均音量を差し引いた音量)。
- 横軸:条件
- 縦軸:平均音量差[dB]
- 青色バー:ISOVOX 2使用(ISOVOX 2外録音)時の平均音量から、ISOVOX 2使用(ISOVOX 2内録音)時の平均音量を差し引いた音量
- 橙色バー:ウタエット EX+使用(ISOVOX 2外録音)時の平均音量から、ISOVOX 2使用(ISOVOX 2内録音)時の平均音量を差し引いた音量
上記グラフから以下のことがわかります。
- ISOVOX 2内外で-19~-25dB程度の音量差あり(青色バーの長さ)
- 総じてウタエット EX+の方が防音効果が高い(青色バーと橙色バーの差)
- ISOVOX 2-ウタエット EX+間で4~7dB程度の音量差あり(青色バーと橙色バーの差)
2-2.平均音量差比較(地声F4)
以下に平均音量差比較結果のグラフを示します(ISOVOX 2内録音時の平均音量を差し引いた音量)。
- 横軸:条件
- 縦軸:平均音量差[dB]
- 青色バー:ISOVOX 2使用(ISOVOX 2外録音)時の平均音量から、ISOVOX 2使用(ISOVOX 2内録音)時の平均音量を差し引いた音量
- 橙色バー:ウタエット EX+使用(ISOVOX 2外録音)時の平均音量から、ISOVOX 2使用(ISOVOX 2内録音)時の平均音量を差し引いた音量
上記グラフから以下のことがわかります。
- 声条件ごとの差が大きい
- ISOVOX 2内外で-10~-22dB程度の音量差あり(青色バーの長さ)
- 総じてウタエット EX+の方が防音効果が高い(青色バーと橙色バーの差)
- ISOVOX 2-ウタエット EX+間で1~23dB程度の音量差あり(青色バーと橙色バーの差)
この音域はかなり張り上げて発声しているのですが、
こうした声に対しては、ISOVOX 2の防音効果はウタエットに比べてかなり薄れることがあるようです。
2-3.平均音量差比較(裏声1"ア")
アンザッツ5的な音色(割と鋭めの裏声)を狙って発声しています。
以下に平均音量差比較結果のグラフを示します(ISOVOX 2内録音時の平均音量を差し引いた音量)。
- 横軸:条件
- 縦軸:平均音量差[dB]
- 青色バー:ISOVOX 2使用(ISOVOX 2外録音)時の平均音量から、ISOVOX 2使用(ISOVOX 2内録音)時の平均音量を差し引いた音量
- 橙色バー:ウタエット EX+使用(ISOVOX 2外録音)時の平均音量から、ISOVOX 2使用(ISOVOX 2内録音)時の平均音量を差し引いた音量
上記グラフから以下のことがわかります。
- ISOVOX 2内外で-17~-24dB程度の音量差あり(青色バーの長さ)
- 総じてウタエット EX+の方が防音効果が高い(青色バーと橙色バーの差)
- ISOVOX 2-ウタエット EX+間で0.7~7dB程度の音量差あり(青色バーと橙色バーの差)
2-4.平均音量差比較(裏声2"ア")
アンザッツ6的な音色(割と太めの裏声)を狙って発声しています。
以下に平均音量差比較結果のグラフを示します(ISOVOX 2内録音時の平均音量を差し引いた音量)。
- 横軸:条件
- 縦軸:平均音量差[dB]
- 青色バー:ISOVOX 2使用(ISOVOX 2外録音)時の平均音量から、ISOVOX 2使用(ISOVOX 2内録音)時の平均音量を差し引いた音量
- 橙色バー:ウタエット EX+使用(ISOVOX 2外録音)時の平均音量から、ISOVOX 2使用(ISOVOX 2内録音)時の平均音量を差し引いた音量
上記グラフから以下のことがわかります。
- 声条件ごとの差がやや大きい
- おおよそウタエット EX+の方が防音効果が高い(青色バーと橙色バーの差)(※3)
- ISOVOX 2内外で-19~-32dB程度の音量差あり(青色バーの長さ)
- ISOVOX 2-ウタエット EX+間で-1~14dB程度の音量差あり(青色バーと橙色バーの差)
(※3)一部、ISOVOX 2の方が小音量となっているものもあるが、両者の差は1dB程度とわずかであり、実質ほぼ同等と思われる
3.最後に
以上、パーソナル防音ブース(ボーカルブース)として使えるISOVOX 2と、防音マスク系グッズとして使えるウタエット EX+の防音効果を簡易に比較実測してみた結果についてお伝えしてきました。
今回の検証結果から得た結論としては、
- 防音効果はほとんどの場合でウタエット EX+の方が高い
といったところです。
今回はISOVOX 2とウタエット EX+でそれぞれ別に発声&録音せざるを得なかったため、
測定ばらつき(極力揃えたつもりですが)の影響を含む結果にはなっていますが、
一つの目安として参考になるものではないか、と思います。
構造の違いを考えても、隙間の多いISOVOX 2より、
口周りを直接覆えて、隙間を少なくできるウタエットの方が防音効果自体は期待できるといえそうです。
ですので、
- 防音重視:ウタエット
- 歌唱&録音環境重視:ISOVOX 2
といったように、用途に応じて選ぶ(使い分ける)のがよいかと思います。
私自身、ISOVOX 2を導入してからウタエットはあまり使っていませんが、
防音重視したい場合にはウタエットを使おうと思っており、
ISOVOX 2導入後もウタエットは手元に残しています。
今回の記事が
- (もっと手軽に導入可能な)防音マスク系グッズと比べて、ISOVOX 2の防音効果はどうなのか?
といったところが気になる方のご参考になれば幸いです。