Melodyne不要、DTMでギターアルペジオを修正(補正)込みできれいに仕上げる方法
今回はギター演奏の中でも地味に難しいアルペジオをDTMで修正する方法についてお伝えします。
ズバリ、こんな方におススメの内容です。
- アルペジオが苦手
- DTMで録音したギターをきれいにしたい
これまで、DTMにおけるギター修正方法として、リズム編
や、音鳴り編
をお伝えしてきましたが、アルペジオの修正はいわばそれらの応用編。
アルペジオは演奏自体もさることながら、修正もなかなか難しかったりします。
というのも、前の音を残したり切ったりしながら演奏が進んでいくため、
修正部分前後と整合をとりながら修正する必要があるためです。
しかし、以下の2方針を意識すれば、それほど作業難航せず、筋良くアルペジオが仕上がっていくかと思います。
- 修正しやすい録音を行う
- クロスフェードを駆使して違和感を抑える修正を行う
1つ目に挙げた「修正しやすい録音」として注意するのは以下3点。
- テイクを多めにとっておく(特に出だし)
- フォームチェンジ前後で演奏を分けたものも録音しておく
- 全体的には音を伸ばすことを意識して演奏録音する
2つ目に挙げた方針「クロスフェードを駆使して違和感を抑える修正を行う」はケースバイケースですが、アルペジオでは修正部分前後と整合をとることが特に重要であるため、
単純なコード弾きや単音弾き(ギターソロなど)に比べると、一般的にはクロスフェードが特に重宝するかと思います。
・・・と、概要としてはこれぐらいにして、以下、詳しくみていきましょう!
1.録音時の注意
冒頭にも挙げました「修正しやすい録音」を行うための注意点です。
以下3点。
- テイクを多めにとっておく(特に出だし)
- フォームチェンジ前後で演奏を分けたものも録音しておく
- 全体的には音を伸ばすことを意識して演奏録音する
以下、1つずつ少し詳しく説明していきます。
1-1.テイクを多めにとっておく(特に出だし)
アルペジオに限った話ではないのですが、アルペジオにおいては特に重要です。
単音のギターリフなどの繰り返しフレーズにおいては、1回目(出だし)の部分を2回目のものに差し替えることを行ったりしますが、
アルペジオの場合、1回目(出だし)と2回目で状況が異なるので、そのまま差し替えるわけにはいきません。
どういうことか??
1回目の続きから入る2回目部分には前の音が残っていますが(1回目の終盤から残している音)、1回目は鳴らし始めのため、前の音が聴こえないはずであるためです。
そうした状況のもと、1回目(出だし)の部分を2回目のものに差し替えたりすると、違和感が生じます。
アルペジオは一定回数の繰り返しのパターンで録音することが多いと思いますので、その中で特にアルペジオ出だし(前の音が聴こえない鳴らし始め部分)のテイクは貴重です。
ですので、この出だしのパターンを意識的に多めに録音しておくと、後々修正しやすくなります(差し替えるネタ(テイク)が増える分、修正自由度が上がるため)。
1-2.フォームチェンジ前後で演奏を分けたものも録音しておく
コード弾きにおけるコード(フォーム)チェンジに比べて、アルペジオのフォームチェンジはシビアです。
(フォーム:ギター指板側の手の形)
というのも、大抵の場合、フォームチェンジぎりぎりまで音を伸ばし続け、フォームチェンジ後は遅滞なくきれいに次の音を鳴らし始める必要があるためです。
コード弾きの場合、コードチェンジ時に開放弦の音が鳴ったりするのも「味の一つ」としてアリな場合が多いですが、アルペジオでそのようなケースはほとんどないと思います。
また、アルペジオでは、普段のコード弾きなどでは使用しないような特殊なフォームをすることも多いと思います。
そのような特殊なフォームだと、なおのことフォームチェンジがシビアになってきます。
というわけで、弾いていて「ここはどうしてももたついてしまうなぁ」と思ったところは、
- フォームチェンジ直前まで丁寧に音を鳴らしきった演奏を録音
- フォームチェンジ後の演奏を録音
というように、フォームチェンジ前後で演奏を分けて録音するとよいでしょう。
なお、フォームチェンジ後の演奏を録音する際、フォームチェンジ直前の音(少なくとも一部)が残っていないと、前後の演奏をつなげたとき、音的に整合がとれないこともあると思います(フォームチェンジ後の演奏で急に前の音が消えてしまうといった具合に)。
そのような場合は、その残す音を鳴らした後、チェンジ後のフォームを整え、フォームチェンジ後の演奏を録音します(残すべき音が残っている間に録音しきってしまうのがポイント)。
このように録音を行うと、フォームチェンジ前の録音フレーズと、フォームチェンジ後の録音フレーズをクロスフェードでつなげた際、フォームチェンジ前後で伸ばし続けるべき音がきれいにつながってくれることかと思います(クロスフェード部分の長さ、フェードパターンなどの調整は必要ですが)。
1-3.全体的には音を伸ばすことを意識して演奏録音する
上の1-2でも触れましたが、アルペジオではフォームチェンジぎりぎりまで音を丁寧に鳴らし続ける必要のある場合が多いです。
また、ギター演奏修正においては「長すぎるものを短くする」よりも「短かすぎるものを長くする」方が難しいです。
「短かすぎるものを長くする」ためには、テンポ変更、既存余韻部分のつなぎ合わせといった処理が必要ですが、音鳴りの問題もあり、調整に手こずることも少なくありません。
一方、「長すぎるものを短くする」方は、基本的には単純カット(&フェード)処理で済みます(場合によっては、追加調整が必要だったりしますが・・・)。
ですので、後々の修正工程を考えると、全体としては音を伸ばすことを意識して演奏録音する方がよいでしょう。
2.症状別対処法
ここでは、演奏録音したものを聴いたときに、気付くであろう各症状に対して、どのような処理(修正)を行えばよいのかをお伝えしていきます。
2-1.アルペジオ途中の音が短すぎる(音価不足)
これは演奏録音中によくあることですが、例えば、鳴らしている弦に指や服の袖などが当たったりすると、音の減衰が本来よりも早くなって、音価不足に陥ります。
単音弾きであれば、テンポ変更などで音を伸ばせばよいですが、アルペジオの場合は、他に鳴っている音のバランスとの兼ね合いもあるので、そう簡単にはいきません。
ですので、アルペジオの場合は、まず次の対処を試みるとよいでしょう。
- 対象の音(短すぎる音)の単音弾きを別トラックで追加録音して重ねる
これだけでうまくいけばよいですが、追加録音したものを単純に重ねるだけでは、鳴らし始めの音が強くなりすぎて違和感が生じる場合もあるでしょう。
そのようなときには、次のような手立てもあります。
- 対象の音(短すぎる音)の単音弾きを別トラックで追加録音して重ねたものの冒頭部分を、元音の減衰具合いに応じてフェードインさせる
こちらの方法では、フェードインパターンの調整によって、減衰の補正を必要なだけ行うようにできますので、より自然な処理結果が得られます。
2-2.アルペジオ中、前の音が長く残りすぎている(音価過剰)
アルペジオ中に必要な弦ミュートが十分でなかった場合などに生じ得る現象です。
対処方法としては以下が挙げられます。
- 前の音が要らなくなるところから演奏録音したものをつなげる
つなげる際、その前後で演奏が不自然に変化しているように感じられるような場合には、クロスフェードでつなげるのもよいでしょう。
2-3.アルペジオ途中で遅れている部分がある
アルペジオのテンポキープは難しく、ところどころこうした部分が出てくるものです。
まずは以下の手順で調整することを試みます。
- 遅れている前の部分をカット、遅れている部分(音の立ち上がりから)をジャストの位置(基準位置)に前倒し
- 長さの足りなくなった部分はテンポ変更、または同種テイクの貼り付けで調整
- つなぎ目を適宜クロスフェードでつなぐ
処理イメージは以下の通りです。
上の図では、Bが遅れている部分に相当しますので、これをジャストの位置(基準位置)に持ってきて(Aの末尾は一旦カットのつもりで)、
余ったCの部分は、同種テイクを貼り付けるか、Bのテンポを遅くして(ピッチはそのまま)長さを伸ばす形で、埋めるようにします。
各処理前後のつなぎ目が不自然な場合、各部分の末尾を伸ばす形でクロスフェードを使ってつなぐとよいでしょう。
上の図でいえば、
Aの末尾を伸ばしてBの冒頭に重ねる、Bの末尾を伸ばしてCの冒頭に重ねる、Cの末尾を伸ばしてDの冒頭に重ねる、
といった具合に、各部分の末尾を伸ばして各々の後ろにつながっている次の部分の冒頭に重ねます。
その上で、各々の冒頭でクロスフェード(Bの冒頭でAの末尾、Cの冒頭でBの末尾、Dの冒頭でCの末尾とクロスフェード)させると、つなぎ目の違和感を軽減できるかと思います。
なお、上で挙げた手順における2番目の処置「テンポ変更、または同種テイクの貼り付けで調整」については、以下記事の「5.音価不足(音が短すぎる)部分の補正」をご参考にしていただければ、と思います。
2-4.アルペジオ途中で早すぎる部分がある
上の2-3とは逆ですが、やはりところどころはこうした部分が出てくるものです。
まずは以下の手順で調整することを試みます。
- 前の部分を伸ばし、早すぎる部分(音の立ち上がりから)をジャストの位置(基準位置)に前倒し
- 長さの足りなくなった部分はテンポ変更、または同種テイクの貼り付けで調整
- つなぎ目を適宜クロスフェードでつなぐ
処理イメージは以下の通りです。
上の図では、Cが早すぎる部分に相当しますので、これをジャストの位置(基準位置)に持ってきて(Cの末尾は一旦カットのつもりで)、
余ったBの部分は、同種テイクを貼り付けるか、Aのテンポを遅くして(ピッチはそのまま)長さを伸ばす形で、埋めるようにします。
各処理前後のつなぎ目が不自然な場合、各部分の末尾を伸ばす形でクロスフェードを使ってつなぐとよいでしょう。
上の図でいえば、
Aの末尾を伸ばしてBの冒頭に重ねる、Bの末尾を伸ばしてCの冒頭に重ねる、Cの末尾を伸ばしてDの冒頭に重ねる、
といった具合に、各部分の末尾を伸ばして各々の後ろにつながっている次の部分の冒頭に重ねます。
その上で、各々の冒頭でクロスフェード(Bの冒頭でAの末尾、Cの冒頭でBの末尾、Dの冒頭でCの末尾とクロスフェード)させると、つなぎ目の違和感を軽減できるかと思います。
2-5.フォームチェンジでもたついている
録音するときには気が付かなかったが、録音したものを後で聴いてみるとどうやらもたついている・・・
そんなこともあると思います。
もたついているわけですから、先ほど「2-3.アルペジオ途中で遅れている部分がある」や「2-4.アルペジオ途中で早すぎる部分がある」で紹介した方法でも修正できますが、
修正調整するよりも再録した方が筋良く済むこともあるかと思います。
再録で対応する場合は上の1-2で説明した通りの手順で対応可能です。
2-6.アルペジオ途中で鳴らし損じ(音抜け)がある
これはもうシンプルに以下の通り対処するとよいでしょう。
- 鳴らし損じた音に対応する部分を別トラックで追加録音して重ねる
2-7.音量バランスが悪い
これもシンプルに以下の通り対処するとよいでしょう。
- 相対的に音量が小さい音に対応する部分を別トラックで追加録音して重ねる
3.最後に
以上、ギターアルペジオをDTMで修正する方法についてお伝えしてきました。
ここでもう一度要点を整理しておきます。
まず、基本方針として以下2点。
- 修正しやすい録音を行う
- クロスフェードを駆使して違和感を抑える修正を行う
これらを意識すれば、それほど作業難航せず、筋良くアルペジオが仕上がっていくかと思います。
そして、1つ目に挙げた「修正しやすい録音」として注意するのは以下3点。
- テイクを多めにとっておく(特に出だし)
- フォームチェンジ前後で演奏を分けたものも録音しておく
- 全体的には音を伸ばすことを意識して演奏録音する
2つ目に挙げた方針「クロスフェードを駆使して違和感を抑える修正を行う」はケースバイケースですが、アルペジオでは修正部分前後と整合をとることが特に重要であるため、
単純なコード弾きや単音弾き(ギターソロなど)に比べると、一般的にはクロスフェードが特に重宝するかと思います。
今回の記事が
- アルペジオが苦手
- DTMで録音したギターをきれいにしたい
といった方のご参考になれば幸いです。