【新曲制作の裏側】ジャキジャキギターのローファイなガレージ/オルタナティヴロック「枯れかけ」

前回記事でお伝えしたように、私、八雲橋かつなり新曲枯れかけ」が、各社音楽ストリーミング/ダウンロード配信サイト&YouTubeにて配信開始となりました!

この「枯れかけ」は、ジャキっとしたギター騒がしいローファイサウンドが特徴のガレージ/オルタナティヴロックの一曲です。

この曲の制作にあたって、特に苦労した点は次の2点です。

  • ドラムサウンド
  • ピックスクラッチ

どちらも、理想とする音がなかなか得られず、試行錯誤を繰り返しました。

また、今回の制作作業全体を通して学んだことも色々あり、その中で特に重要だと感じたのは次の3つのことでした。

  • ACID Pro 832bit音源を使うことはそれほど面倒なことではない
  • 録音ファイル頭出し作業は効率化できる
  • 気力が十分でないときはポモドーロテクニックを用いるとよい

今回は、こうした制作の裏側についてお伝えしていきます。

1.制作過程

イントロのギターリフとBメロのコードパターン自体は、10年以上前から頭の中にありました。

が、これらのリフやコードパターンを使って、一曲を仕上げようと奮起したことがなかったので、長らく放置状態となっていました。

今年の夏になってようやく「このネタもそろそろ曲に仕立ててしまおう!」と一念発起したのが制作のきっかけです。

制作プロセスはざっと以下の通りです。

  1. アイデアスケッチ的ギター録音
  2. 曲展開の構想、打ち込み
  3. ギター録音
  4. テイク選定&音配置(1回目)
  5. ギター追加録音
  6. テイク選定&音配置(2回目)
  7. 仕上げ

1-1.アイデアスケッチ的ギター録音

まずは、既に頭の中にあるギターパターンを録音しました。

この段階では楽器の打ち込みは行わず、DAWソフト付属のドラムループ音源に合わせてギターを録音しました。

テンポ(BPM)は色々探ったあげく、シンプルな(?)120に落ち着きました。

Bメロのコードパターンは、パワーコードにするか通常コードにするかまでは、この段階で決まっていなかったので、両方のパターンを録音しました。

録音しておけば、後でいつでも選べますからね!

1-2.曲展開の構想、打ち込み

Bメロまでは既にイメージが出来上がっていたので、Bメロからの展開を練るのが主でした。

曲展開と主旋律は同時に考えました。

Cメロで転調させるのは、当初考えていませんでしたが、Bメロ、サビと続く主旋律の流れで、自然に湧いて出てきた感じです。

そこまでくると、最後のDメロはもう流れるまま、あっという間に固まりました。

1-3.ギター録音

ここまでで一通りのバッキングトラックが仕上がったので、その上に乗せるギターパターン、フレーズを考えて録音フェーズへ。

リズムギターは、パワーコード、通常コードだけなので、あまり考える余地はありませんが、音の切れ目アタック感を意識して、いくつかのパターンを録りました。

一方、リードギターアルペジオオブリガートギターソロで、こちらはフレーズレベルで色んな案が浮上したので、リズムギターよりも多くのパターンを録音することに。

ギターソロオブリガートも、リズムギター同様、アタック感を意識して演奏し、納得のいく音が録れるまでテイクを重ねました。

特に1サビ終了後に入るギターソロ(0:52~)冒頭の「パーン」という感触ダブルチョーキング音が気に入っています。

録音を終えて「やはりテレキャスターを手にしてよかったな~」としみじみ思いました。

1-4.テイク選定&音配置(1回目)

毎回悩みまくるところです。

色んなパターンを複数テイク録音しているので、言わば「何とでもなる」状態なわけですが、「どうしたいのか」が問われるわけですね。

  • パワーコードにするか通常コードにするか?
  • 音を切るべきか伸ばすべきか?
  • 刻むべきか?

などなど・・・

保留と決断を繰返しながら少しずつ今の形に近づけていきました。

1-5.ギター追加録音

前ステップまでで、ほぼほぼ形にはなったのですが、Dメロの一部でギターの鳴りに納得がいかず録り直すことに・・・

正直、腰は重かったのですが、

  • ここまできたらきっちりやろう
  • 録れば済む話

と気持ちを固めて、録音に臨みました。

1-6.テイク選定&音配置(2回目)

追加録音したテイクを選定して配置。

正直、流し聴きだとあまり違いがわかりませんが、ヘッドホンで集中聴きすると、やはり新録の方が良く、録り直して良かったと感じました。

1-7.仕上げ

いわゆる、ミックスマスタリングと呼ばれる作業などが含まれる工程です。

やることは決まっていながら、なかなか終わらないのがこのフェーズの特徴。

ヘッドホンとスピーカーで何度も聴いては手直し、また聴いて手直し・・・を繰り返しました。

マスタリングも何パターンか試しましたが、1バージョンに絞りきれず、結局、甲乙付けがたい3つのバージョンを今回全て配信することにしました。

音の好みと再生環境に合わせて聴いていただければ、と思います。

もちろん、3バージョンの聴き比べも大歓迎ですよ!!

2.苦労点

制作は毎度苦労の連続ですが、今回特に苦労した(悩んだ)のが次の2点でした。

  • ドラムサウンド
  • ピックスクラッチ

2-1.ドラムサウンド

元々はSampleTank 3のドラム音源を割り当てていました。

前回リリースした「電光石火」と同じ音です。

これはこれでパワフルで良いのですが、この曲にはもう少しズシっとした重たいドラムの方が合うのかなぁ、と。

例えば以前リリースした「Clean」のような・・・

そこで、「Clean」でも使っていたドラム音源のDrumCore 3を使うことにしました。

とはいえ、そのまま同じ音にしても面白くない。

そもそも、曲調が違えばマッチするドラムサウンドも違うはず。

そこで、今回初めてマスタリングプラグインソフトのOzone 8 Elementsでのドラムサウンド作りに挑戦しました。

Ozone8 Elementsでは、ドラム用のプリセットも用意されていたので、これをベースに理想のドラムサウンドを作り込んでいきました。

この曲の騒がしいイメージは、このドラムサウンドによるところが大きいと思っています。

2-2.ピックスクラッチ

Dメロ直前(1:58~)でピックスクラッチを入れていますが、今の音に行き着くのにも苦労しました。

これから盛り上がるぞ!

という感じを出したかったので、とにかく強烈な一音を録ってやろうと思ったのですが、なかなか思うようなパンチのある音が録れず・・・

「とにかくパワーだ!」とばかり、ギターの弦にピックを思い切り叩きつけその後も弦を執拗にこすり付けるというプレイをひたすら繰り返し、ようやくこの音に至りました。

ピックスクラッチしまくった結果、録音を終える頃には、ピックがすっかり欠けていましたw

3.学んだこと

今回の制作で学んだことは次のような点でした。

  • ACID Pro 832bit音源を使うことはそれほど面倒なことではない
  • 録音ファイル頭出し作業は効率化できる
  • 気力が十分でないときはポモドーロテクニックを用いるとよい

3-1.ACID Pro 8で32bit音源を使うことはそれほど面倒なことではない

64bit VSTのみ対応のDAWソフトACID Pro 832bit VST音源のDrumCore 3を使用するという話です。

2-1で触れた通り、今回はドラム音源に32bit VSTDrumcore 3を使用したため、こうしたプロセスを通りました。

確かに手間は増えるものの、慣れてしまえばそれほど面倒なことではないと感じています。

このブログでは、以下記事にその手順をまとめています。

3-2.録音ファイルの頭出し作業は効率化できる

ギター録音ファイルテイク選定をする際の作業方法の話です。

今回のケースもそうですが、ギター録音時には、あとで色々選べるように、数多くのテイクを録ることが多いです。

が、多すぎるとなかなか選ぶのが大変で・・・

しかし、以下の記事にまとめた方法を利用すると、そうした作業をいくらか省力化できました。

3-3.気力が十分でないときはポモドーロテクニックを用いるとよい

これは特に記事化してはいませんが、「25分作業+5分休憩」のサイクルを繰り返すというポモドーロテクニックが有効という話です。

充実した気力のもとで手を動かしていると、25分など、あっという間に過ぎてしまうレベルの時間です。

が、気力が十分でない(色々考えて手が動かない)状態では、25分ぐらいの時間が集中力を保てる限界であったりします。

もっとも、気力の充実が問題となっていたのは、仕上げ作業に入るまでのフェーズ。

仕上げ以前の作業というのは、なかなか道筋が見えないものです。

そんなもやっとした状況の中、作業を続けるのにはそれなりの気力が必要で、その気力は必ずしも常に持ち合わせているものでもない・・・

そこでポモドーロテクニックが必要になるわけなんですね。

逆に、曲がほぼほぼ完成し、作業内容が明確仕上げ作業の段階では、ポモドーロテクニックなど使用しなくても、自然にのめり込めるようになっていました。

道筋のはっきりしない作業でも、ポモドーロテクニックが不要になるほどのめり込めるようになればよいのですが、これは今後の課題として、修養していこうと思います!

4.最後に

以上、今回配信リリースした新曲「枯れかけ」の制作過程苦労点などといった、制作の裏側についてお伝えしました。

ギター録音というアナログ作業の伴う制作は、時間のかかるものですが、作りたいのがそういう方向の音なので、今後もギターロック系楽曲の制作&リリースを続けていきます!