音楽アルバムはオワコンか?~サブスク/プレイリスト全盛の時代に~
Spotify、Apple Musicなどといった、音楽サブスクリプション(定額音楽配信サービス)が最近ますます盛り上がってきていますね。
本ブログでも色んな角度から取り上げていますが・・・
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音楽サブスクでは様々なプレイリストが、用意されていたり、はたまたリスナーの好みに合うよう日々最適化されていたりします。
複数曲をまとめて聴けるプレイリスト、いいですよね~
って、アレ?
まとめて聴けるといえば「アルバム」ってどうなったんだっけ?
オワコン?
いや、さすがに「オワコン」とまでは言わないまでも、こうもプレイリストが隆盛を極めてくると、
- 「アルバムを聴く意味はあるのだろうか?」(音楽を聴く側)
- 「アルバムを作る意味はあるのだろうか?」(音楽を作る側)
という疑問が浮上してくるのではないでしょうか?
そこで今回は、
音楽を聴く側、作る側、双方の立場から、
「アルバムのメリット、デメリットなどといった特徴」
を改めて洗い出して、その回答を導出してみたいと思います。
先に結論を抜粋して述べると
- 「統一的に聴かせる要素がなければ、アルバムであることに固有の意味(価値)はない」
です。
あくまで私個人の見解ですけどね・・・
それでは以下、詳しくみていきましょう!
1.聴く側のメリット
聴く側としては、アルバム、プレイリスト、両方の選択肢があります。
ですので、
- アルバムならではのメリット
- プレイリストにも共通するメリット
という区分けで確認していきます。
1-1.アルバムならではのメリット
次の2点が挙げられます。
- ちゃんとしたものを聴いたという満足感が得られる
- 購入する場合、その所有の満足感が高い
まず1つ目、「ちゃんとしたものを聴いたという満足感が得られる」。
「ちゃんとしたもの」という概念が曖昧ですが、やはりアルバムというものは「カチッと作られている」という印象があります。
まとめて聴くにふさわしい曲を選び、それを自然な流れになるように並べて・・・
などなど。
それを曲順通り、途中で飛ばしたりすることもなく、それこそ「ちゃんと」聴けば、
「じっくり味わった」
という満足感を得ることができます。
次に2つ目、「購入する場合、その所有の満足感が高い」。
これもアルバムが「ちゃんとしたもの」という認識によるもので、
「ちゃんとしたもの」を購入したときの満足感
には、かなりのものがあるでしょう。
特に、パッケージモノの場合、文字通り「手にする」ことによって、その満足感を確かな実感として味わうことができます(特にモノがかさばることを厭わなければ)。
パッケージでも配信でも、大抵ジャケット(カバー)というものがあり、モノによっては、これだけでも相当な満足感が得られることもままありそうです。
1-2.プレイリストにも共通するメリット
次の2点が挙げられます。
- 音楽を探しやすい
- まとめて聴いて得られる満足感がある
まず1つ目、「音楽を探しやすい」。
仮に、とあるアーティストにおいて「アルバム」というものがなく、全楽曲がシングルリリースされている状態を考えてみましょう。
この場合だと、例えば音楽サブスクのアーティストページなどで、数多くの楽曲がずらっと並ぶことになります。
ベテランアーティストなら、それこそ何百曲という単位にもなるでしょう。
そうなるともう
「どれを聴いていいかわからない」
という状態になりますね。
その点、何曲かまとまった「アルバム」や「プレイリスト」というフォーマットであれば、並ぶ作品数がある程度抑えられます。
そうなると、何百曲が独立してとっ散らかった状態よりは、
「聴くものを選びやすい」
と考えられます。
次に2つ目、「まとめて聴いて得られる満足感がある」。
「まとめて聴ける」
という点は、「アルバム」、「プレイリスト」双方に共通する特徴です。
時間が許せば、1曲といわず、何曲か聴きたいときがほとんどなので、これは1つメリットといえます。
2.聴く側のデメリット
こちらも、
- 「アルバムならでは」の点
- 「プレイリストにも共通する」点
両方が考えられるので、そうした区分けで確認していきます。
2-1.アルバムならではのデメリット
これは作る側の都合ではあるのですが、次の1点が挙げられます。
- 新しい曲がすぐには聴けない
「アルバム」というのは、大抵数曲から十数曲ぐらい収録されるものなので、
新曲メインのアルバムとなると、完成までにはそれなりに時間がかかります。
それまでの間、シングルが何発か出されることも多いですが、やはり全曲シングルカットというのは非常に稀有なこと。
その意味で
「新しい曲が聴けるまで結構待たされる」
といってよいと思います。
なお、プレイリストというのは、既に出た曲を使って編集されることがほとんどですので、ここでの議論の対象外とします。
2-2.プレイリストにも共通するデメリット
次の1点が挙げられます。
- 好きでない曲が混じることがある
自作プレイリストなら回避可能な点ですが・・・
アルバムにしてもプレイリストにしても、他人の選曲になりますので、どうしても自分の好みに完全一致したものにはならないもの。
もっとも、音楽サブスクによっては、音楽の聴取傾向を学習して、自分の好みに最適化してくれるプレイリストもありますが・・・
3.作る側のメリット
作る側としては、アルバム、プレイリストを区別する意味があまりありません。
まとめてリリースする場合、大抵アルバム(曲数が少ない場合はEPなど)になるでしょう。
なので、ここではアルバム、プレイリストと分けずに議論します(基本的には統一的に「アルバム」と表現します)。
メリットとして次の4点が挙げられます。
- ちゃんとしたものを作ったという満足感が得られる
- コンセプト単位で表現できる
- 曲間の繋がった作品を発表できる
- ジャケットやプロモーション準備の手間が省ける
聴く側のメリットに比べると多いですね。
1つずつみていきましょう。
3-1.ちゃんとしたものを作ったという満足感が得られる
「聴く側」のところでも述べましたが、やはりアルバムというのは漠然と「ちゃんとしたもの」という印象がありますね。
それは作る側としても同じです。
以降で触れる「コンセプト」や「曲間の繋がり」といった点がなくても、
曲をある程度まとめて詰め込めば、「ちゃんとしたもの」が仕上がる感があります。
「ちゃんとした」という意味では、リリース済の音源をまとめて編集するプレイリストと違って、
統一的な音編集(音量、質感など)のもと、リスナーに届けられる
という点もメリットと言えそうですね。
3-2.コンセプト単位で表現できる
複数曲からなるアルバム1枚で何かを表現する・・・
そんなコンセプト単位の表現ができるのも、アルバムならではの特徴です。
1曲ずつシングルリリースする場合でも、例えばシングル3曲を「三部作」などといって、ある程度統一性を持たせることは可能ですが、
アルバム表現の統一感には かないません。
これは1つアルバムの強みといえますね。
3-3.曲間の繋がった作品を発表できる
上で挙げた「コンセプト単位の表現」の一環として行われることも多いですが、これを実現するには、やはりアルバムとしてまとめて発表する必要があります。
3-4.ジャケットやプロモーション準備の手間が省ける
これは・・・w
全曲シングルリリースとなると、全曲分のジャケット(カバー)、プロモーション準備の手間がかかります。
プロモーションは省けるかもしれませんが、パッケージでもデータでも、何かしらのジャケットは必要でしょう。
しかも曲ごとに異なるジャケットが・・・
アルバムだと、(何曲かごとにまとまった)アルバム1枚に対してこれらの準備を行えばよいので、
「非常に手間が省ける」ということになります。
いや、これは本質ではないでしょうが、メリットを挙げるとすると、こうした点も浮かび上がってきます。
4.作る側のデメリット
ズバリ次の1点でしょう。
- 新曲の数が多いとリリースまでが遅くなる
明確なコンセプトなどがなくても、単純に複数曲をまとめてリリースする時点で、やはり遅くなります。
制作を分担して、並行作業すればある程度高速化は可能でしょうが、全曲揃ってからの作業というのもありますので・・・
もっとも、既存の曲をまとめるタイプのアルバムであれば、このデメリットは解消されます。
上でも挙げたように、アルバム自体
「まとめて聴ける」という聴く側のメリット
があるので、
聴く側のことも考えて「既存の曲をまとめたアルバムを作る」
のはアリかもしれません(プレイリスト的に)。
5.結論
以上、聴く側、作る側双方の立場から、
アルバムのメリット、デメリット
を確認してきました。
色々な角度から、アルバムの意味を考えてきましたが、以下の通り結論付けたいと思います。
まず、音楽の聴き方について。
- アルバムやプレイリストで音源をまとめること、及びまとめて聴くことには一定の価値がある
次に、アルバムとプレイリストの意味(価値)について。
- 統一的に聴かせる要素がなければ、アルバムであることに固有の意味(価値)はない
- 単にまとめて聴くというだけであれば、プレイリストでも可
個人的には、単に曲をまとめて発表するというだけでは、アルバムの値打ちはないと思います。
音楽サブスクなどで、プレイリストを手軽に作成して楽しめる時代ですから。
となると、ジャケット準備などの手間はあるにせよ、ガンガンシングルリリースして、
- 新しい曲をいち早くリスナーに聴いてもらう
- 新しい曲をいち早くプレイリストに組み込んでもらう(そしてヘビロテしてもらう)
方がよいのでは?
と個人的には思います。
とはいえ、4の最後の方で触れたように、
- これまでリリースしてきた音源を用いて、プレイリスト代わりにアルバムリリースする
というのはアリかもしれません。
私も音楽サブスクで何曲か配信していますが(以下ブログ内ページ参照)、
「プレイリスト的にまとめて聴いてもらえるような、アルバムをリリースするのもよいかもなぁ」
と思っていたりもします。
これまではシングル、またはEPといった、曲数少なめのフォーマットでのリリースが続いてきましたから。
しかし、そうなると「せっかくだからリメイクしたい」ところもあるし、リメイク版をまたシングルリリースしてからの方が・・・
となると、またアルバムリリースが延びるんだよなぁ・・・
とか何とかかんとか、ぐるぐる考えてしまいます。
はてさて、どうするのがベストなのか・・・?
ともあれ、今回の記事が、音楽アルバムの意味、ひいては音楽の聴き方、音楽活動の仕方を考える上でのヒントになれば幸いです!